ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編

インターレース

作成:2005年09月
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インターレース方式の概略

 テレビの映像は、下図のように画素と呼ばれる「点」の集まりからできてい ます。そして、1枚の画像(フレーム)を1秒に約30枚(正確には29.97枚)の 速い速度で画像を切り替えてゆくことで、動画像を実現しています。
 下図の行方向(横方向)を走査線と呼び、走査線に上から番号をつけています。

1 ○○○●○○○●●●○○○●●○
2 ○○●○●○○●○○●○●○○●
3 ○○●○●○○●●●○○●○○○
4 ○●●●●●○●○○●○●○○○
5 ○●○○○●○●○○●○●○○●
6 ○●○○○●○●●●○○○●●○

    フレーム(1/30秒)

 しかし、1秒間に30フレームでは、動きがぎこちなく感じます。そこで、 1枚のフレームを2枚のフィールドに分けて、1秒間に60フィールド作成 するインターレース方式が使われています。インターレース方式では、1枚 のフレームの奇数の走査線(行)のみを集めた奇数フィールドと、残った偶数 の走査線のみを集めた偶数フィールドで分けています。

○○○●○○○●●●○○○●●○ 1
                 2 ○○●○●○○●○○●○●○○●
○○●○●○○●●●○○●○○○ 3
                 4 ○●●●●●○●○○●○●○○○
○●○○○●○●○○●○●○○● 5
                 6 ○●○○○●○●●●○○○●●○
  奇数フィールド(1/60秒)
                     偶数フィールド(1/60秒)

 奇数フィールドと偶数フィールドを交互に表示してゆくことで、1秒間に変 化する画像の枚数を増すことが出来るため、滑らかな動きが実現できるよう になりました。
 ちなみに、始めから1秒間に60フレームを送れば早いように感じますが、 そうすると情報量(帯域幅やビットレート)が2倍に増えてしまいます。つま り、インターレース方式は、情報量を半分にしつつ滑らかな映像を表示する ために必要不可欠な映像技術です。

               →|   |←1/30秒
    |   |   |   |   |   |   |   |   |   |   |
30fps  | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A |
    |   |   |   |   |   |   |   |   |   |   |
      | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | 60i   |1A|1B|2A|2B|3A|3B|4A|4B|5A|5B|6A|6B|7A|7B|8A|8B|9A|9B|AA|AB| (30fps) | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |                →| |←                 1/60秒           時間 →
                 fps : 1秒間のフレーム数                  60i : 60フィールドのインターレース

 また、走査線の数はハイビジョンの1125i(インターレース)であれば、 1125本あります。奇数フィールドは奇数番号の563本の走査線で構成 されており、また、偶数フィールドは偶数番号の562本で構成されます。

 奇数フィールド  563本  1,3,5,7,9,11,13,15,17...1123,1125
 偶数フィールド  562本   2,4,6,8,10,12,14,16,18...1124
 合計      1125本

 現在(2005年)放送されているハイビジョン放送は全てインターレース方式の 1920×1080の解像度で放送されています。走査線数1125本が、 縦の解像度である1080本と一致しないのは、ブラウン管では上下が欠け る為、上下の45本には映像の含まれていない信号が出力されるためです。
 つまり、1125本の走査線のうち映像が含まれている部分は1080本と なります。


プログレッシブ方式

 アナログのブラウン管テレビでは、実際の走査線がインターレースで表示さ れていましたが、液晶テレビでは、1秒に30フレームのインターレース信 号から1秒に60フレームのインターレースしないフレームに変換してから 表示しています。情報量は2倍になりますが、液晶パネルへの情報転送は高 速化が容易であるため問題ありませんし、むしろ、デジタル補間処理で情報 量を増加させることで、解像度を増加させる効果があります。
 このような、インターレースしない方式をプログレッシブ方式、もしくは、 ノンインターレース方式と呼びます。

 インターレース方式は、静止画を表示した場合に画面がちらついてしまう欠 点があります。例えばパソコンのモニターなどではインターレースで表示し てしまうと文字が読みにくくなりますので、プログレッシブ方式で表示して います。

 また、2005年現在、既に、ブラウン管テレビが液晶テレビに置き換わりつつ あります。つまり、ハイビジョン放送を受信するテレビの多くはプログレッ シブ方式で受信していることになります。したがって、インターレース方式 で放送された映像をテレビ側でプログレッシブ方式に変換して表示する必要 があります。

 なお、デジタル放送でも走査線750本のプログレッシブ放送の規格は存在 しており、D4以上のD端子(関連情報「方式編-
HDMI」)でプログレッシブ 放送にも対応しています。
 過去に、テレビ朝日と朝日放送がプログレッシブ方式を推進してきており、 BSデジタル放送(BS朝日)での実験放送がありました。また、2000年 4月に は東芝から720p(750p)のプログレッシブ表示にネイティブ対応したブラウン 管テレビ36ZX720が登場した経緯があります。720pに対応したD4入力端子を 4つも備えており、表示も1080iに変換せずにダイレクトに720p表示が可能で した。製品名に720pの720を取り入れるなど、プログレッシブ放送への積 極的な動きが見られました。(2005年現在は放送されていません。)

プログレッシブ変換(IP変換)

 インターレース信号をプログレッシブに変換するには、静止画の部分と動画 の部分で異なる方法が必要です。
 静止画の場合は、インターレース信号の奇数フィールドと偶数フィールドを 合成して作成します。これにより、解像度が増加します。

    |   |   |   |   |   |   |   |   |   |   |
60i   |1A|1B|2A|2B|3A|3B|4A|4B|5A|5B|6A|6B|7A|7B|8A|8B|9A|9B|AA|AB|
(30fps) |奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|奇|偶|
    | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
     \/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
      ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
60p 60fps |1|2|3|4|5|6|7|8|9|A|B|C|D|E|F|G|H|I|J|
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |

 この方法を動画に適用すると前後のフレームが合成されてしまい動きのある 部分がボヤケて見えます。これを「動きボケ」と呼びます。
 したがって、動いている部分に対しては、一つのフィールド内の走査線を合 成した方が視覚上の解像度が高くなります。

1 ○○○●○○○●●●○○○●●○
2 ○○●○●○○●○○●○●○○●
3 ○○●○●○○●●●○○●○○○
4 ○●●●●●○●○○●○●○○○
5 ○●○○○●○●○○●○●○○●
6 ○●○○○●○●●●○○○●●○

      静止画合成方式

○○○●○○○●●●○○○●●○ 1 ○○◎○◎○○◎○○◎○◎○○◎
○○◎◎◎○○●●●○○◎◎◎○ 2 ○○●○●○○●○○●○●○○●
○○●○●○○●●●○○●○○○ 3 ○◎●◎●◎○●○○●○●○○◎
○◎◎○◎◎○●◎◎◎○●○○◎ 4 ○●●●●●○●○○●○●○○○
○●○○○●○●○○●○●○○● 5 ○●◎◎◎●○●◎◎◎○◎◎◎○
○◎○○○◎○◎○○◎○◎○○◎ 6 ○●○○○●○●●●○○○●●○

 動画合成方式(奇数フィールド)    動画合成方式(偶数フィールド)

 上図の左側は奇数フィールドの動画合成方法です。走査線の1番目と3番目 から2番目の走査線を補間によって合成しています。また4、6番目の走査 線も同様です。偶数フィールドでも奇数の走査線が前後の走査線から補間さ れています。
 上図の例の補間方法は、上下の走査線を垂直方向に補間している簡単な方式 です。このため静止状態の解像度が低下していることが分かります。つまり、 プログレッシブ変換では、補間の方式や、動作部分と静止部分の判断方法が 重要な技術であることが分かります。

 AQUOSプラットフォームで採用されているパターンマッチング動き適応IP変換 では、垂直方向だけでなく、水平方向を含めた平面での画像の繋がり、さらに 時間方向の映像の繋がりから、補間する映像を予測して合成しています。
 このため、斜めのラインの再現性や、動作部分での解像度の向上が図られて います。

2-3プルダウン方式(テレビシネマ変換)

 映画のフィルムでは1秒間に24コマで記録されており、これを1秒間60 フィールドのテレビ用のインターレース信号に変換する方式を2-3プルダウン と呼んでいます。

              →|   |←1/24秒
映画  |   |   |   |   |   |   |   |   |
24p fps | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
    |   |   |   |   |   |   |   |   |
    |   /    |   /    |   /    |   /    |
    |   |    |   |    |   |    |   |    |
    |   |    |   |    |   |    |   |    |
テレビ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
60i   |1A|1B|2A|2B|3A|3B|4A|4B|5A|5B|6A|6B|7A|7B|8A|8B|9A|9B|AA|AB|
(30fps) |   |   |   |   |   |   |   |   |   |   |
               →|   |←
                 1/30秒           時間 →

 このように、映画の放送やDVDでは2-3プルダウン方式によって変換された 映像信号が放送されたり記録されています。この信号をインターレースで表示 する場合は問題ありませんが、液晶でプログレッシブ表示するには問題が生じ ます。前節で説明した前後のフィールドからプログレッシブ変換する場合につ いて説明します。2-3プルダウン方式の信号を、下図のようにプログレッシブ 変換すると、一部では元信号の同一フレームを合成し、また、他の部分では 元信号の前後フレームが合成されます。

              →|   |←1/24秒
映画  |   |   |   |   |   |   |   |   |
24p fps | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
    |   |   |   |   |   |   |   |   |
    |   /    |   /    |   /    |   /    |
    |   |    |   |    |   |    |   |    |
    |   |    |   |    |   |    |   |    |
テレビ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
60i   |1A|1B|2A|2B|3A|3B|4A|4B|5A|5B|6A|6B|7A|7B|8A|8B|9A|9B|AA|AB|
(30fps) |   |   |   |   |   |   |   |   |   |   |
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
     \/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
      ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
60p fps  |1||3|4||6||8|9||B||D|E||G||I|J|
     | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |

 このように合成するフレームが異なる元フレームにまたがってしまう点で、 画質の劣化や、ぎこちない動きとなってしまいます。
 そこで、テレビによっては、2-3プルダウン方式を検出して、2-3プルダウン の場合は、一度、24fpsの元信号を再現してから、改めて60fpsへ変換する等 の変換方法で、このような問題が発生しないように工夫されています。

 ところが、放送局側では、元々の24fpsの映画を60i(30fps)に変換した映像に 60iで字幕やテロップを合成して放送されている場合があります。このような 放送にて2-3プルダウンを検出した場合、映像を24fpsに変換した時点で、60i の字幕のフレームが支障をきたすため、ぎこちない動きになってしまいます。

 プログレッシブ変換の方法は、各メーカーが様々な技術を開発しており自然 な動きと解像度を両立できる方法が研究されています。
 特に大画面テレビでは、画面が大きい分、これらの技術が重要になりますの で、画像処理エンジンと呼んで各社が技術を競っています。

課題

 インターレース方式は情報量を半分にすることが出来る点ではメリットがあ りますが、受信器側でインターレースをプログレッシブに変換する必要があ ります。しかも、このプログレッシブ変換によって「動きボケ」を始めとす る映像の劣化が生じてしまいます。
 また、2005年現在、多くのテレビの有効画素が768pとなっており、1080i放送 を768pに変換して表示しています。このような現実を考えると、現時点では、 720pのプログレッシブ放送が適切だったかのように感じられます。
 しかし、将来を考えた場合、1080iでの放送は1080pに移行しやすくなります。 事実、1080iのフルHD対応の液晶テレビも登場してきており、今後は1080p 対応の機器も登場してくるでしょう。
 720pのプログレッシブ放送は、現時点では最良の方式に感じますが、長期的 に見れば廃れ行く方式に過ぎないとも考えられますので、1080pへの考慮が、 現在の1080iのインターレース方式に決まった背景なのかもしれません。

 この他に、アナログハイビジョン方式(MUSE)では有効走査線数1035i(但し、 走査線はデジタルと同じ1125i)が使用されていた経緯があり映像ライブラリ などで一部1035iの映像も残っています。


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