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衛星放送は人工衛星から地上に向かって電波を送信して各戸に放送する方式です。放送局で制作された番組は、人工衛星に送られ、人工衛星から地上に放送されます。つまり、人工衛星は放送の中継を行っていることになります。
放送用の人工衛星には主に静止衛星が用いられています。静止衛星とは赤道上の地上から約35,786kmの上空で地球の回転と同じ約24時間の周期で回り続けている人工衛星です。地上から見たときに静止して見えるので、固定のパラボラアンテナで受信することが出来ます。また、静止軌道は地球の半径に対して6.6倍も離れているので、国を超えて広範囲に放送することも技術的には可能ですが、実際には指向性アンテナを用いて日本の本土にビームを絞って放送しています。このため、本土から離れるにつれて受信できなくなります。
BSデジタル放送や東経110°CSデジタル放送(広帯域CS)は赤道上空の東経110°の人工衛星から放送しています。これらは異なる人工衛星ですが、どちらも地球から見れば近接しているので、同じアンテナで受信することが出来ます。
現在、BSデジタル放送は放送衛星BSAT-3b等から11.7GHz〜12.2GHzの右旋偏波で放送しており、東経110°CSデジタル放送は通信衛星N-SAT-110から12.2GHz〜12.8GHzの右旋偏波で放送しています(2011年10月)。他にも、東経128°と124°を使用したスカパー!HD(狭帯域CSデジタル放送)などが放送されています。
一方、地上デジタル放送は東京タワーやスカイツリー、生駒山といった送信所から地上に近い領域を伝搬し、関東圏、関西圏などの地域ごとに異なる放送を行っています。衛星放送は人工衛星から全国に同じ番組を放送している点に違いがあります。
放送
放送種別
| 送信所、衛星の位置
| 放送エリア
| 地上デジタル放送
| 地上波
| タワー、山など
| 地域ごと
| BSデジタル放送
| 放送衛星
| 東経110°放送衛星
| 全国
| 東経110°CSデジタル放送
| 通信衛星
| 東経110°通信衛星
| 全国
| スカパー!HD等
| 通信衛星
| 東経128°124°など
| 全国
| |
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多くの地上デジタル放送対応テレビやBDレコーダはBSデジタル放送と東経110°CSデジタル放送の両方の受信に対応しています。したがって、大皿のような形状の衛星放送用アンテナ(パラボラアンテナ)が屋根などに設置されていれば、宅内の機器配線を行うことで国内の衛星放送を受信できます。しかし、古いBSアナログ用のアンテナの場合は、アンテナの性能やケーブルの性能の違いで受信が不安定になる場合や視聴できない場合があります。アンテナ設置や機器配線については後の章で詳しく説明します。なお、NHKの衛星放送を受信することが可能な機器を設置した場合は、NHKとの放送受信契約を衛星契約に変更する必要があります。
お手持ちのテレビが衛星放送に対応している場合は、テレビのリモコンに「BS」と「CS」もしくは「110°CS」といったボタンがあります。リモコンにこれらのボタンが無い場合は残念ながら衛星放送に対応していませんので、別途、単体の衛星チューナが必要です。
これらのボタンがある場合は、いずれかを押下してから「番組表」ボタンを押してみてください。BSデジタル放送ではNHK BS1、NHK BSプレミアムをはじめ、無料の民放7局(BS日テレ、BS朝日、BS-TBS、BSジャパン、BSフジ、BSイレブン、TwellV)、有料放送2局(WOWOW、スターチャンネル)、データ放送(ウェザーニュース)などが視聴できます。また、東経110°CSデジタル放送では、スカパー!e2による様々な専門チャンネルを有料(一部は無料)で視聴することができます。ただし、衛星を使ったスカパー!放送には、スカパー! e2とスカパー! HDがあり、スカパー! HDは東経128°124°の異なる通信衛星から放送されているので、一般のテレビに内蔵されているBS・CSチューナでは受信できません。
衛星放送が視聴できない場合は、テレビにB-CASカード(赤色)が正しく挿入されているかどうかを確認します。カード挿入部にカードロック用のスイッチが付いている場合は、装着後にスイッチを切り替える必要があります。また、契約しないと視聴できない番組もありますので、視聴可能なチャンネルに変えてみてください。それでも視聴できない場合は、テレビの設定メニューからBS・CSアンテナ電源を「入」に設定します。BS・CSアンテナ電源は衛星放送用アンテナに内蔵されているLNBを動作させるための電源です。詳しくは本書2.1.1章を参照してください。
以上を確認しても視聴できない場合は、テレビの配線が正しくない可能性がありますので、すぐにBS・CSアンテナ電源を「切」に設定してから本書1.4章テレビコンセントとアンテナ端子の接続方法に進んでください。
ここでは身近な国内の衛星放送の受信方法を例にあげて、衛星放送の受信において重要となるLNBによる周波数変換や変換後の中間周波数(IF:Intermediate Frequency)について学びます。
衛星放送は約12GHzという高い周波数で放送されています。この周波数を同軸ケーブルに流すと非常に減衰が大きいので、受信アンテナ部で約1〜2GHzの周波数に変換してから屋内にアンテナケーブルで引き込みます。変換後の周波数をBS・CS-IF周波数と呼び、また、この周波数変換部をLNB(Low Noise Block)もしくはBS・CSコンバータと呼んでいます。LNBは衛星放送用のパラボラアンテナの尖端に取り付けられている受電部(LNBF)に含まれています。
周波数変換を行うためには局部発振器が必要です。局部発振器はLNB内に内蔵されており、国内のBSデジタル放送や東経110°CSデジタル放送の局部発振器の周波数は10.678 GHzに固定されています。この局部発振器の周波数のことを局発周波数(もしくはローカル周波数)と呼んでいます(表 2 1 衛星放送の局発周波数)。通常、衛星放送用アンテナの局発周波数は変更できませんが、ごく一部でLNBを交換するなどして局発周波数の変更可能なアンテナも市販されているようです。
LNB内では局部発振器の出力と衛星放送波の12GHzとが周波数変換器に混入されています。そして、周波数変換器はアンテナが受信した周波数から局発周波数を減算した周波数を出力します。この変換後の周波数を中間周波数と呼び、BS-IFやBS・CS-IFと記します。
例えばBS放送の11.996GHzを受信した場合、局発周波数10.678GHzを減算した1318MHzがBS-IF周波数となります。
(式) BS周波数 − 局発周波数 = BS-IF周波数
(例) 11.996 GHz − 10.678 GHz = 1.318 GHz (1318 MHz)
このようにLNBは衛星からの放送波を中間周波数に変換して衛星放送用アンテナの出力端子から出力します。この中間周波数の放送波をアンテナケーブルを使用してテレビやチューナに入力することで、衛星放送が視聴できるようになります。
国内の衛星チューナはアンテナの局発周波数に合わせて設計されていますので、局発周波数の異なるアンテナでの受信が出来ません。たとえ周波数を合わせられたとしても、放送方式が異なると受信できません。
ここでは標準的なテレビの配線方法について説明します。ただし、住宅や機器などの違いで様々な配線方法があり、必ずしもこのとおりに接続すれば良いとは限りませんので御注意ください。
1. 衛星放送のみを視聴する場合(確認用などで) 2. 一つのテレビコンセントから分波する (最も標準的) 3. 衛星アンテナ専用のテレビコンセントがある場合 4. レコーダがある場合 5. アンテナからアンテナコンセントまでの接続方法(工事例) |
衛星放送は約35,786kmもの遠い静止衛星から12GHzという高い周波数を使って送信されています。受信するには高い利得のアンテナが必要で、パラボラアンテナが用いられます。ここではパラボラアンテナの偏波やアンテナ利得について説明します。
分波器はアンテナケーブル内の複数の放送波を、周波数帯に応じて2出力以上に分けるためのアンテナ部品(アンテナ周辺機器)です。セパレーターとも呼ばれています。ここでは衛星放送の受信で使用する分波器と分配器との違い、接続例や特性例などについて説明します。
分配器や分岐器はアンテナケーブルを2本以上に分配するためのアンテナ部品(アンテナ周辺機器)です。ここでは、分配器の損失、分配器内蔵機器の接続例、特性例、分岐器(直列ユニット)などについて説明します。
分波器はアンテナケーブル内の複数の放送波を、周波数帯に応じて2出力以上に分けるためのアンテナ部品(アンテナ周辺機器)です。セパレーターとも呼ばれています。ここでは衛星放送の受信で使用する分波器と分配器との違い、接続例や特性例などについて説明します。
アンテナで受信した放送波はアンテナケーブルや分配器などの損失で弱まってしまいます。これらの損失に備えて予め放送波を増幅しておくためのアンテナ部品(アンテナ周辺機器)がブースタです。
また、衛星デジタル放送と地上デジタル放送の両方の電波を1本のアンテナケーブルに混合する混合器と同じ機能が含まれているブースタもあります。
衛星放送が受信できない場合はアンテナの方向を再調整したり、アンテナから受信機までの損失を改善したりして対策します。ここでは、それぞれの方法について説明します。
うまく受信できない場合はアンテナの不具合と思いがちですが、まずは衛星アンテナ用電源の設定は適切であるかどうかや、国内の衛星放送の場合はテレビやチューナにB-CASカードが挿入されているかどうかを確認します。また、ブースタ等を使用している場合はパイロットランプ(P.L)が正しく点灯しているかどうかも確認します。パイロットランプが点灯しない場合は直流電源が正しく供給されていない可能性があります。
3章では、パラボラアンテナ、分波器、分配器、ブースタといったアンテナ部品について説明しました。ここでは、これら以外に受信対策用として必要なアンテナ部品である、アッテネータ、ダミー抵抗器、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタについて、それぞれの使い方を簡単に説明します。
アンテナケーブルを他の機器に接続するためには、アンテナケーブルの端にF型接栓を取り付ける必要があります。この接栓部は、衛星放送のBS・CS-IFのアンテナケーブルで不具合が発生しやすい場所の一つです。
ここでは正しい接栓の加工方法を説明しますが、接栓のメーカーや型番によって若干の違いがあります。したがって、説明書が付属している場合はそちらに従ってください。
写真 4 7にF型接栓の製作の手順を示します。準備するものは、@に示すように、アンテナケーブル、F型接栓と専用のリング、熱収縮チューブです。熱収縮チューブは熱を加えると収縮する絶縁チューブです。ここでは、網線がはみ出すのを防ぐために使用していますが、銅線がはみ出さないように加工できる場合は不要です。
・きれいに地デジを映す本 (CQ出版社)
・地デジTV用プリアンプの実験 (CQ出版社)
・デジタル放送用受信装置 標準規格 ARIB STD-B21 5.0版 (電波産業会)
・デジタル放送用受信装置 標準規格 ARIB STD-B44 1.0版 (電波産業会)
・http://www.b-sat.co.jp/jigyouannai/uplinkcenter.html (株式会社放送衛星システム)
1 衛星放送を知ろう 1.1 衛星放送の概要と特徴 1.2 衛星放送対応テレビでの視聴方法 1.3 単体チューナとテレビの接続方法 1.4 テレビコンセントとアンテナ端子の接続方法 2 衛星放送を受信してみよう 2.1 衛星放送の受信のための基礎知識 2.1.1 LNB(BS・CSコンバータ)の役割、原理 2.1.2 アンテナケーブル・アンテナ部品の対応周波数 2.1.3 F型接栓とPAL型コネクタ 2.1.4 アンテナへの直流電源給電方法 2.1.5 チャンネルと放送周波数 2.2 標準的な配線方法 2.2.1 衛星放送のみを視聴する場合(確認用などで) 2.2.2 一つのテレビコンセントから分波する(最も標準的) 2.2.3 衛星アンテナ専用のテレビコンセントがある場合 2.2.4 レコーダがある場合 2.2.5 アンテナからアンテナコンセントまでの接続例(工事例) 3 衛星受信アンテナや部品について詳しく知ろう 3.1 パラボラアンテナ 3.1.1 電波を受信するしくみ 3.1.2 水平偏波と垂直偏波 3.1.3 右旋円偏波と左旋円偏波 3.1.4 異なる偏波方式のアンテナ受信 3.1.5 衛星放送の偏波 3.1.6 パラボラアンテナのアンテナ利得 3.1.7 受信システム設計の例 3.1.8 降雨減衰 3.2 分波器と分配器 3.2.1 放送波を分ける分波器 3.2.2 分波器と分配器の違い 3.2.3 分波器を使った接続の例 3.2.4 分波器の特性例 3.2.5 分波器を混合器として利用する 3.3 分配器と分岐器(直列ユニット) 3.3.1 分配器の損失 3.3.2 空き端子の禁止 3.3.3 分配器内蔵機器の接続例 3.3.4 分配器の特性の例 3.3.5 電流通過型分配器 3.3.6 分岐器、直列ユニットとは 3.4 ブースタと混合器 3.4.1 ブースタとは 3.4.2 ブースタの種類 3.4.3 ブースタの電源挿入方法 3.4.4 分配損失を補う 3.4.5 ケーブル損失を補う 3.4.6 ブースタの問題 3.4.7 混合器とは 3.4.8 混合器の問題 3.4.9 電源挿入器とは 4 衛星放送の受信の問題対策 4.1 受信の問題対策 4.1.1 アンテナの方向調整 4.1.2 アンテナレベル表示 4.2 問題箇所の特定手順 4.3 その他の受信対策用アンテナ部品(アンテナ周辺機器) 4.3.1 アッテネータ 4.3.2 ダミー抵抗器 4.3.3 バンドバスフィルタ 4.3.4 ノッチフィルタ 4.4 アンテナケーブルのF型接栓加工方法 |
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