ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編 - 液晶方式(LCD)

              (作成:2005年01月)      地デジTopへ戻る

RGB画面表示
SHARP ASV液晶(フルHD)

液晶方式

  液晶テレビは、バックライト光を透過したり遮ったりして、表示を行ってい
  ます。透過光は、偏光板を用いて一定方向の編波光(画面を正面にして上下に
  振動する光波もしくは、左右に振動する光波)のみを通過させます。
  液晶分子の配列によって偏光板を透過する編波と透過しない編波に切り替え
  ることが、液晶テレビの動作原理です。

TN方式,IPS方式,VA方式

  それぞれの液晶方式の特長を下記の表にまとめました。

液晶分子の配列による方式分類
方式分類
(液晶分子の配列による)
配列の
 変化
製造
コスト
コント
ラスト
応答
 速度
視野角
TN(Twisted Nematic)方式 ねじれ ○安い ×低い △   ×狭い
IPS(In-Plane Switching)方式 水平 △   △   ×遅い ○広い
VA(Vertically Aligned)方式 垂直 ×高い ○高い ○高速 △  

  但し、上記の特徴は液晶分子の配列上に本質的に存在する特徴であり、それ
  ぞれの欠点は、関連技術によって補われています。事実、IPS方式だから、
  応答速度が極端に遅いとか、VA方式(ASV方式)だから価格が著しく高いといっ
  た問題はありません。

  TN方式は主にパソコン用として、IPS方式は日立S-IPS方式がPanasonic VIERA
  で使用されており、VA方式は SHARP CPA方式(ASV液晶)が SHARP AQUOSで使用
  されています。

改良された液晶方式(一例)
液晶方式
(分類)
液晶方式
(一例)
主な
 用途
製造
コスト
コント
ラスト
応答
 速度
視野角
TN方式 各社 TN方式 PC 50% 400 6ms 170度
IPS方式 日立 S-IPS方式 テレビ 80% 800 8ms 178度
VA方式 SHARP CPA方式 テレビ 100% 1200 6ms 176度

  さらに、コントラストや応答速度は画像エンジンなどで補うことが可能で、
  テレビとしての最終性能は、IPS方式とVA方式で、殆んど見分けのつかない
  レベルに達しています。

  TN方式はコントラストの低さ、視野角の狭さからテレビ用としては、あま
  り使われていません。しかし、PC用としての画質の改良は最も進んでおり、
  白地に黒の文字を表示して、正面から見た場合は、VA方式であるサムスン
  のPVA方式(S-PVA方式)と遜色の無い画質が得られています。なりより価格が
  非常に安いことが特長です。

  なお、上記のTN方式は分子配列に対する方式名です。一方、画素の駆動方法
  としては、TFT駆動によるアクティブマトリクス駆動方式をTFT方式と
  呼んでおり、このTFT方式に対して、単純マトリクス方式をSTN方式と
  呼んでいました。STNとは、TN方式の液晶分子配列(ねじれ)を改良した
  Super TN方式なので、本来は駆動方式の違いで使われるのは、おかしいの
  ですが、単純マトリクス駆動からアクティブマトリクス駆動に進化した経緯
  から、単純マトリクス=STN、アクティブマトリクス=TFTといった、
  用語が定着してしまいました。
  TFTとは薄膜トランジスタのことで、液晶ガラス板上の画素の一つ一つに
  トランジスタが生成されていて画素の一つ一つを制御する方式で、テレビで
  使用されている液晶駆動方式はTN方式も含めて全てアクティブ駆動です。

ASV液晶(Advanced Super View)

  ASV液晶は、後述のCPA方式の液晶です。ただし、MVA方式の液晶もASV液晶と
  呼ぶことがあります。
  いずれの方式についても、VA方式の欠点である視野角を液晶分子配列により
  補った方式で、高コントラスト、高速、高視野角と優れた特性を有しています。

  ASV液晶を使用した液晶テレビ SHARP AQUOS は、これらの優れた特性によっ
  て、従来のアナログ方式のブラウン管テレビから置き換わろうとしています。
                (2004年12月 AQUOS 累計生産台数は500万台)

CPA方式(Continuous Pinwheel Alignment)

  VA方式の液晶は液晶分子が画面に対して垂直に配列させていますので、広い
  視野角が実現できます。それでも、棒状の液晶分子の長さが視野角を制限して
  しまう問題がありました。
  ASV液晶は、通電の時に、液晶分子を花火のように全方向に配列させる事で、
  光を透過するSHARP独自の方式です。液晶の画素に数個の傾斜した突起を設け、
  さらに突起と突起の間の電極にスリットを入れています。電圧をかけたときに、
  液晶分子は、スリットから突起までの区間で斜めに配列されますので、突起や
  スリットの配置関係で、液晶分子の配列を様々な方向に配列されることが出来
  るようになります。1画素内の液晶分子が同じ方向に配列しないことで、見る
  角度による透過率の偏りを減少させて、視野角性能を高めています。
  同社の液晶パネルの画素の拡大写真を見ると、下図のように1画素を4分割し、
  4方向に配列させているようです。

   ┏━━━┳━━━┳━━━┓
   ┃\1\\1\\1\
   ┃ \  \  \ 
   ┃\2\\2\\2\
   ┠───╂───╂───┨
   ┃/3//3//3/
   ┃ /  /  / 
   ┃/4//4//4/
   ┗━━━┻━━━┻━━━┛

  ASV液晶
  https://www.sharp-ssp.co.jp/products/kigyoumuke/monitor/asv.html

日立 S-IPS方式(Super In-Plane Switching)

  ASV液晶をはじめとするVA方式では、垂直(画面の奥行き方向)に電界を
  かけて画素をオン/オフさせていました。日立が開発したIPS方式は、電界
  を平面方向にかけて、液晶分子を水平に90度回転させて透過する方式です。
  液晶の分子配列上、原理的に最も視野角の制限が少ない方式である為、狭い
  住居において大勢で液晶テレビを視る様な場合に、大変、適した方式です。
  しかし、原理的にコントラストや応答速度が遅い欠点があり、液晶を高電圧
  で駆動しなければならず、液晶パネルを駆動する消費電力が増大し、液晶の
  駆動回路の規模や発熱が増加してしまったり、周囲の温度条件によって表示
  が不安定になってしまったりする問題がありました。
  しかし、液晶テレビの消費電力の多くはバックライトで消費しており、液晶
  パネルの消費電力の増加が目立たないことや、液晶駆動回路(液晶ドライバ)
  の発熱についても、バックライトを放熱しなければならないことを考えれば
  大きく不利になることはありません。このあたりに着目した日立は、カラー
  フィルタや駆動電圧オーバードライブ等の技術で、IPS方式の課題を改善し、
  原理的に最も広視野角な液晶テレビの実用化に成功しました。
  また、日立、東芝、松下は共同で、シャープや海外メーカに対抗するべく
  IPSパネル専門の製造会社、(株)IPS アルファテクノロジを2005年1月に設立
  しました。

  IPS方式(日立)
  https://www.hitachi-displays.com/recruit/job/2009783_16945.html


富士通 MVA方式(Multi-domain Vertical Alignment)

  MVA方式は、液晶分子が多方向(反円錐状)に配列する方式です。

SAMSUNG PVA方式(Patterned Vertical Alignment)

  MVAを改良したサムスンの独自方式で、液晶パネルの正面方向に開口パターン
  をずらして配置しておき、液晶分子が、お互いにずれた開口パターンに向かっ
  て配列することで、光が透過する方式です。VA方式の低コスト化に適している
  らしいのですが、詳細は、不明です。

  ソニーは液晶パネルを製造しておらず、2004年の4月にサムスンとの合弁会社
  S-LCDを設立して液晶パネルの供給を受けています。また、プラズマテレビも
  縮小し、サムスンの液晶パネルを主軸にした事業を展開しており、この液晶
  パネルをSONYパネル(S-PVA液晶)と呼んで、ブランド力の向上にも努めていま
  す。

OCB方式(Optically Compensated Birefringence)

  液晶分子をくし状に配列させておき、電圧をかけたときに垂直とする方式で、
  応答速度が5ms(OFF→ON→OFF)と極めて速い特徴があります。この高速応答を
  利用して、FS(Field Sequential)方式と呼ばれるフィルタレスの液晶テレビ
  も開発されています。(商品化は未)
  従来の液晶テレビは、液晶に3原色のフィルタを通してカラー表示を実現し
  ていましたが、FS方式では3色の光源を高速で切り替えることでカラー表示
  を実現することができます。



冷陰極管(CCFL,Cold Cathode Fluorescent Lamp)

  液晶のバックライトに使用している光源の一つで、通常の蛍光灯と、ほぼ同じ
  構造です。通常の蛍光灯では放電をしやすくするために、放電部分にヒーター
  (フィラメント)が搭載されています。しかし、ヒーターの発熱分が損失になる
  ため、電力効率が低下してしまいます。一方、冷陰極管ではヒーターを搭載し
  ていない蛍光灯のことです。ヒーターを搭載していないので、放電させるのに
  高電圧(1000V以上)のトランス/インバーター回路が必要になります。



Panasonic クリアフォーカス駆動(液晶)

  フレームクリエーション:映像を秒間60コマ→90コマに増加
                  (高速化と24コマ3-2変換映像のブレ対策)
  バックライトスキャン :バックライトを瞬時的に消灯
                    (網膜内の追従効果と変化点表示防止)

        従来液晶表示          Panasonic開発方式

   ̄ ̄ ̄ ̄□■■■■■□ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄□■■■■■□
  コマ1 □■■■■■□      コマ1 □■■■■■□
      □■■■■■□           □追従   □追従(網膜内)
      □■■■■■□            □■■■■■□
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄□■■■■■□ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ □■■■■■□
  コマ2  → □■■■■■□   コマ2    □     □
       移動□■■■■■□           □■■■■■□
      |  □■■■■■□           □■■■■■□
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄□■■■□■□ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ □     □
  コマ3 |  |→ □■■■■■□  3      |□■■■■■□
         |  □■■■■■□         |□■■■■■□
      |  |  |               ||
      |←→|←→|              →||←
       ボヤケ ボヤケ(動きボケ)        ボヤケ(動きボケ)低減
       (網膜内残像効果)

  ※画像を動きのある部分を見ているとき、人間の目は、画像の動きに追従し
   ようとするにもかかわらず、従来の液晶では、移動する映像がコマの中で
   静止したままでした。この時、移動量が網膜内で残像効果となって視覚上
   のボヤケ(動きボケ)が発生していました。

SHARP Quick Shoot技術

  詳細は公開されていませんが、名称から想像すると画素の色調変化が激しい
  ときに電圧をオーバーシュートさせて高速に液晶を応答させる技術がベース
  になっていると思われます。本機能を無効にする機能が付いている場合があ
  りますが、機種によって効果に違いがあるようです。古い機種では、比較的
  目立つような動きに飛躍的な改善が見られましたが、新しい機種ではあまり
  感じられません。(十分に高速なパネルが使われているものと思います。)
  また、上記のPanasonicのクリアフォーカス駆動に類似した動作も併用されて
  いるようで、Quick Shoot技術の名称と実際に投入されている技術内容とが、
  必ずしも一貫性のあるものでは無いような気がします。
  つまり、液晶の応答速度を向上させるための技術の総称として使用している
  と考えた方が良いでしょう。

SHARP マルチ画素(MPGC)技術

  同社のASV方式を含め、VA方式の液晶パネルは視野角が広い特長を持っ
  ていますが、同一面で液晶分子を整列させるIPS方式と比べると、劣って
  しまいます。この欠点を改良するために、1ドットを2つの画素で表現する
  マルチ画素技術が採用されています。
  2つの画素を、それぞれ低輝度用と高輝度用の画素として、低輝度用(!?)の
  画素に高視野角な画素を使用することで、斜めから見た時のコントラスト比
  の改善を行なっているものと思われます。(実体は公開されていません)
  高輝度の画素が輝度や応答速度を保っているので、視野角を拡大しつつ正面
  から見たときの性能も劣化しない点が優れています。
  しかし、液晶を駆動回路(液晶ドライバ)も2倍に増えてしまい、そもそも、
  製造コストの高いVA方式が、さらにコストアップになってしまいます。

SHARP MPGC技術



アモルファス(アモーファス)シリコン(Amorphous Silicon)

  従来の液晶では、ガラス基板上に、プラズマCVDという装置を使用して、
  アモルファスシリコン(非結晶シリコン)膜を形成させていた。プラズマCVDは
  処理室内を減圧し、SiH4,Si2H6,NH3などのガスを注入してプラズマ放電させ
  ることで、前記のガスを分解してガラス基板上にシリコン膜を形成したり、
  結合させてSiN膜を形成します。処理の温度も500℃以下であり、製造は容易
  なのですが、損失が大きい上に応答速度が遅い問題がありました。

ポリシリコン(Poly-Silicon, 多結晶シリコン)

  ポリシリコンは、完全な単結晶ではありませんが、小さな単結晶の集まりで
  作られています。従来のアモルファスシリコンと比較して、損失が何百倍も
  小さくなります。
  しかし、ポリシリコンを形成するには処理室内の温度を1000℃以上にする必
  要があり、ガラス基板が溶けてしまう問題がありました。そこで、アモルファ
  スシリコンをエキシマレーザーによってアニール(再加熱)することで500℃以
  下の低温(といっても高い温度)で、ポリシリコンの形成が可能になりました。
  なお、低温処理でのポリシリコンの生成を低温ポリシリコンと呼んでいます。

CGS液晶(Continuous Grain Poly-Silicon液晶)

  シャープが開発した独自の低温ポリシリコン技術で、小さな単結晶粒を規則
  的に配列することで、さらなる低損失化を実現した液晶です。この技術を使っ
  て、Z-80というマイコンCPUをガラス基板上に形成したことが有名です。
  これまで液晶の周囲を取り囲むように外付けで配置されていた液晶駆動回路
  が液晶基板上に配置することが出来るようになったりと、携帯電話機などの
  小型化(狭スクリーン額縁化)に実用化されています。



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