このページでは、地デジ受信をビデオ入力端子の無いアナログテレビで受信するためのRFコンバーターの製作方法を紹介してゆきます。 RFコンバーター部は任天堂のゲーム機「ファミコン」用のオプションとして発売されているRFモジュレータ HVC-103(税別定価1500円)やNINTENDO64用のNUS-003を改造して製作します。任天堂は既に製造を中止していますが、Yahoo!ショッピングやYahoo!オークションなどで販売されている場合があります。 |
ここで言うRFコンバーターとは地デジチューナーのビデオ出力を、アナログ放送と同じ電波の信号に変換するものです。 従来のアナログテレビの中には下図のようなビデオ入力端子が無いために、地上デジタル放送に対応した地デジチューナーが接続できない場合があります。
上記のようなビデオ入力端子の無いテレビに地デジチューナーを接続するには、下図のようなRFコンバーターを製作して接続します。
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RFコンバータの製作例 部品を集める まずは以下の部品を集めます。場合によっては不要なものもありますので適宜、調整します。
ケースを分解する 任天堂のRFモジュレータは古い製品です。分解すると保証が効かないし、クレームも言えなくなりますので、可能であれば製作前にファミコン本体に接続して動作確認を行います。動作確認後もしくはファミコンをお持ちでない場合は、ケースから分解します。 RFモジュレータ HVC-103のケースを分解すると、GND,電源、映像入力、音声入力の4本のコードが出てきます。(NUS-003の場合は基板上で、直接、コネクタに接続されています。) それぞれの信号線に、DC電源(5V)、ビデオ信号音声信号、を入力すれば、RF出力端子からRF信号が出力されます。以下に各信号の役割を示します。
これらの4本のコードやコネクタは不要なので取り外しても良いし、残してあっても問題ありません。NUS-003の場合は外すのが難しいと思いますので、外さずにそのまま使います。 RF出力は、ファミコンに付属していたRFスイッチ HVC-003もしくはNUS-009を経由してアナログテレビのVHF入力端子に接続します。RFスイッチを保有していない場合は、次節にしたがってRFモジュレータ HVC-103(またはNUS-003)の金属シールドケース内の回路のDCカット改造を行います。 DCカット改造 ここで言うDCカット改造とは、RFモジュレータ HVC-103(またはNUS-003)の金属カバーを開いて黄色の文字で「101」と書かれた抵抗器を取り外す改造のことです。この抵抗を外すことで直流電源をRF出力に付加しないようにします。 下図の左側の写真が改造前、右側が改造後です。抵抗器はハンダ付けと接着剤で頑固に固定されています。小さな部品用の細い半田コテでは十分な温度が得られない可能性があり、一般の電子工作用の半田コテの方が外しやすいかもしれません。 試してみても外せなかった方やハンダ作業に自身の無い方は、RFスイッチ HVC-003もしくはNUS-009を入手するか、ピンコードの中心線に1000pFのセラミックコンデンサを直列に挿入して直流をカットします(後述)。 DCカット改造前 → DCカット改造後 DCカット改造前 → DCカット改造後 (写真提供=豆炭アンカ様)
前述のDCカット改造が出来た場合は、RF出力端子をアンテナ用のF型コネクタに変換する「ピンプラグ→F型コネクタ変換ケーブル」でテレビに接続することができます。RCAピンコードの中心線をF型コネクタの中心線に接続し、ピンコードの外線をF型コネクタの外部導体に接続します。
ピンプラグ→F型コネクタ変換ケーブル 何らかの事情でDCカット改造が出来ない場合は、下図のようにケーブルの途中に1000pFのコンデンサを挿入して直流をカットします。
電源回路を製作する 次に電源回路の製作です。例えば通常のACアダプタを使用すると電圧が安定しなかったり電源のノイズが混入する場合があり、映像や音声が乱れてしまいます。また、電池の場合は電圧が一定ではありません。 したがって、ここでは(DC)5Vの3端子レギュレータ78L05を使用して、電源を安定化する回路を追加します。 3端子レギュレータには、その名のとおり3つの端子があります。78L05の場合は左から出力(OUT)端子、GND端子、入力(IN)端子となっています。右側の入力端子とGND端子との間に電圧をかけると左側に安定した5Vの出力が得られます。 ただし、安定した5Vの電圧を出力するためには出力電圧よりも数Vだけ高い電圧を入力端子にかける必要があります。たとえば、DC9Vの電池006PやDC9VのACアダプタの電圧を入力することで安定した5Vを得ることができます。なお、電圧が安定化されたACアダプタも市販されています。3端子レギュレータを使わずに安定化DC5VのACアダプタを、直接、接続してもかまいません。
電源入力回路 電源回路部分の拡大図を以下に示します。3端子レギュレータのリード線は短くカットし、特にレギュレータの入出力ピンがGNDに接しないように注意します。緑色にレジスト絶縁されている部分であっても、リード線が接触していると絶縁膜が剥れてきて接触してしまう恐れがありますので、絶縁されている部分にも接触しないように留意します。 レギュレータのGNDは緑色のレジスト絶縁されているGNDの一部のレジストを剥がしてハンダ付けします。レギュレータ78L05には、入力と出力とGNDの3端子がありますので間違わないように接続します。型番(78L05やL05)の表示が正しく見える方向から見て、左から出力(OUT)、GND、入力(IN)の順番です。 1μFのコンデンサはレギュレータの出力側とGND端子にハンダ付けし、0.01〜0.1μFのコンデンサは入力端子のスルーホールにハンダ付けします。 電源入力回路部の拡大図 信号線の配線 最後、各種の信号配線を行います。GND、電源(9V)、ビデオ信号、音声信号のピンコードをハンダ付けします。ビデオ信号と音声信号のシールド線(網線)は基板の背面のGNDに、レジストをはがしてハンダ付けします。3端子レギュレータのパターンカットを説明した写真「電源回路入力回路」の右側の写真を確認していただくと、右上にシールド線をハンダ付けした様子が写っていますので、参考にしてください。 配線後の製作例 以上で回路は完成ですが、電源を入れる前にテストを行います。テスターを使用して抵抗値測定モードもしくは導通モードにして、GNDと電源がショートしていないかを確認します。テスター棒の黒(マイナス側)はGNDに接続し、テスター棒の赤(プラス側)を目的の部位に接触させて測定します。
レギュレータの入力側は非常に高い値(1MΩ以上)を示し、レギュレータの出力側も5kΩ以上を示していれば問題ありません。テスターの出力電圧等によっては、若干、異なる値が表示されます。 次に、テスターを直流電圧測定モードに設定します。テレビに繋がない状態で電源を入れて、レギュレータの出力側が5Vとなっていることを確認します。4.5Vを下回っているような場合は、すぐに電源を切って原因を調査します。さらに、ビデオ入力端子、音声入力端子、DCカット改造を行った場合はRF信号出力端子に電圧がかかっていないことも確認します。多少の電圧が生じる場合がありますが、1Vを超えるような電圧が見られた場合は、すぐに電源を切って原因を調査します。 DCカット改造が適切に行われていなかった場合、テレビにDC電圧が供給されたり、ブースター等のDC15Vの電源が製作したRFコンバーターに供給されて、思わぬ事故や火災が発生する場合もあります。十分に注意して確認してください。 以上の確認後、テレビに接続してRFモジュレータ側とテレビが同じチャンネルになるようにあわせます。RFモジュレータ側はスライドスイッチ(CH1・CH2)をアンテナ出力(RF OUT)側にすると1chになります。一般的には関東では2chに関西では1chに合わせます。テレビのチャンネルの調整が必要な場合もあります。問題なく動作した場合は、ケースに入れて完成です。
電源の電圧が正しいのに動作しなかった場合は、ビデオと音声の入力が誤っていないかを確認します。基板に「キイ」と書いている方が音声ですので、白の音声用のケーブルが接続されている必要があります。「キイ」がビデオ用の黄色のケーブルを指しているわけでは無い点に注意が必要です。 また、RFモジュレータに最初から付いていたピンジャックはアンテナ接続用です。ピンジャックは音声やビデオ用のケーブルで使用することが多いので、そこに音声やビデオケーブルを接続しないように注意してください。 あるいは、テレビ側のチャンネル調整がずれている場合もあります。一般的なアナログ放送のテレビには、VHF−LとVHF−H、UHFの3つのバンドがありますので、VHF−Lに設定する必要もあります。VHFとUHFの設定しか無い場合はVHFに設定します。 NUS-003を使った場合の例 NINTENDO64用 NUS-003(写真提供=豆炭アンカ様) NINTENDO64用に売られていたNUS-003を使用することも可能です。RFモジュレータ部はHVC-103と同一のミツミ製VJ1226が使用されています。しかし、内部にはケーブルが無く基板上にゲーム本体接続コネクタが直接実装されています。 NUS-003のRFモジュレータ部(写真提供=豆炭アンカ様) 製作方法もHVC-103とほぼ同じなので、まずはHVC-103の例を参照してください。ここでは製作の概略だけを説明いたします。 まず、「ケースを分解する」に記載のようにケースを分解し、「DCカット改造」に記載のように金属カバーを開いて、DCカットの改造をします。 次に、「電源回路を製作する」にしたがって、レギュレータ78L05の回路を組みます。3端子の順番には特に注意が必要です。レギュレータ78L05の出力(OUT)はRFモジュレータの電源(+)に接続します。78L05の入力は電池やACアダプタに接続します。 NUS-003の場合の改造方法(写真提供=豆炭アンカ様) しかし、半田付けに慣れていないとレギュレータをNUS-003の基板上で作成するのは難しいと思います。自信のない方は、小さな別のユニバーサル基板(蛇の目基板)で作成した方が良いでしょう。もしくは、別基板を用意するくらいなら、レギュレータを使わずに安定化ACアダプタの5Vを使用してもかまいません。HVC-103の部分で述べたとおり、安定化されていないACアダプタを使用すると映像や音声が乱れてしまいますので、安定化されたDC5VのACアダプタを使用します。 テレビとの接続例を下図に示します。HVC-103と同じ接続ですが、見た目を少し分かりやすく作成しなおしました。 NUS-003の場合のテレビへの接続例 NUS-003の場合の製作例(写真提供=豆炭アンカ様) |
生産終了後、ずっと在庫になっていたはずのHVC-103がこの1年くらいで、随分と品薄になってしまっているようです。地デジ用に正式なRFモジュレータが発売されると良いのですが、将来的に売れ続ける商品では無いので、なかなか出てこないようです。 価格が高くても良いから完成品をお探しの方は、構内ケーブルテレビ用や防犯カメラ用の機器が販売されているようですので、そういった機器の使用を検討してみてはいかがでしょう。 |
製作や改造の不良、配線不良などによっては、火災の発生の原因となる恐れもありますので、十分に注意してください。製作品によるいかなる損害に関しても、当方は一切の責任を負いません。 |
導入編 - 設置の基礎 チューナとアンテナの設置(受信方法) 導入編 - アンテナ部品の基礎 分配器 分波器 ブースター 混合器 方式編 - 変調方式 ASK,BPSK,QPSK,QAM,IQ平面,直交変調 |