ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編 - 変調方式
(作成:2004年11月) 地デジTopへ戻る
(更新:2005年09月)
変調とは
変調とは高周波の搬送波に情報を付加することです。搬送波は変調されてい
ない正弦波のようなRF信号です。
┏━━━┓
情報→┃変調器┃→変調波 (=放射可能なRF信号)
┗━━━┛
↑
搬送波(無変調波)
変調のかかった放射可能なRF信号を変調波と呼び、また、変調波から元の
情報に戻すことを復調と呼んでいます。
ASK(Amplitude Shift Keying)
ASKもしくは、AM(Amplitude Modulation)とは、搬送波の振幅に情報を付加
する方法です。情報をd(t)、中心周波数をfcとすると、以下のような式で
表されます。
ASK(t) = d(t) * cos( 2π*fc*t )
上式のcosの部分は、搬送波を表し、情報d(t)を乗算していますので、例え
ば、情報d(t)=0であれば、ASK信号は0となり、情報d(t)=1であれば、
ASK信号は搬送波となります。
d(t)=0 の時 ASK(t)= 0
d(t)=1 の時 ASK(t)= cos( 2π*fc*t )
搬送波 /\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
×
情 報 _______/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\______/ ̄ ̄ ̄ ̄
↓
ASK ───────/\/\/\/\──────/\/\/
ASKは変調および復調が容易である反面、変調後の帯域が広くなる特徴があ
ります。つまり、共有資源である電波をたくさん必要とするという欠点があ
ります。したがって、ASKが使用されるのは、変復調器が容易である必要性
の高い分野や、あまり使用されていない周波数でのみ使われています。
BPSK(Binary Phase Shift Keying)
ASK(AM)が振幅に変調をかけることに対して、PSK(Phase Shift Keying)、ま
たは、PM(Phase Modulation)では、搬送波の位相を変化させることで変調を
かけます。
PSK(t) = cos( 2π*fc*t + d(t)*π )
d(t)=0 の時 PSK(t)= +cos( 2π*fc*t )
d(t)=1 の時 PSK(t)= −cos( 2π*fc*t )
搬送波 /\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
×
情 報 _______/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\______/ ̄ ̄ ̄ ̄
↓
PSK /\/\/\/─\/\/\/─\/\/\/─\/\/
以上のように位相に対して2値(Binary)をとるものをBPSKと呼んでいます。
BPSKの復調では、位相の変化を検出する為、振幅の情報が不要です。すなわ
ち位相を送れるだけの帯域(情報と同じ帯域)だけで情報を伝達することが容
易であり、容易に帯域を制限することが出来ます。
QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)
BPSKでは、d(t)=0と1の2値でした。d(t)の値を4値とる方式をQPSKと呼
びます。4値とるということは、下式のように2ビットの情報を一度に送る
ことが出来るようになります。
QPSK(t) = cos( 2π*fc*t + θ(t) )
d(t)=00 の時 θ(t)= +π/4
d(t)=01 の時 θ(t)=+3π/4
d(t)=10 の時 θ(t)= −π/4
d(t)=11 の時 θ(t)=−3π/4
|Q
01 ○ | ○ 00
\ | /
\|/
────┼────I
/|\
/ | \
11 ○ | ○ 10
| IQ平面(後述)上のQPSK
QPSKでは、2ビットの情報をBPSKと同じだけの帯域で伝達することが容易で
す。但し、復調に必要となるCNが約2倍となる為、BPSKに比べて伝搬距離が
1/sqrt(2)に短縮されてしまいます。それでも、狭帯域化に有効な技術であり
地上デジタル放送のワンセグ放送や携帯電話などで使用されています。
IQ平面
IQ平面の数式的な意味は、以下のように、直交するcosとsinによる平面を
表していることになり、IとQの振幅によって平面上の自由な点を示すこと
が出来ることが分かります。
IQ(t) = A(t)*cos( 2π*fc*t + θ(t) )
= A(t)*cosθ(t)*cos(2π*fc*t)−A(t)*sinθ(t)*sin(2π*fc*t)
= I(t)*cos(2π*fc*t) − Q(t)*sin(2π*fc*t)
例えば、QPSKの場合、振幅A=1(一定)とすると、以下のように表せます。
d(t)=00 の時 θ(t)=+π/4 I(t)=+1/sqrt(2) Q(t)=+1/sqrt(2)
d(t)=01 の時 θ(t)=+3π/4 I(t)=−1/sqrt(2) Q(t)=+1/sqrt(2)
d(t)=10 の時 θ(t)=−π/4 I(t)=+1/sqrt(2) Q(t)=−1/sqrt(2)
d(t)=11 の時 θ(t)=−3π/4 I(t)=−1/sqrt(2) Q(t)=−1/sqrt(2)
直交変調器(復調器)
このIQ平面の原理を利用した変調器が直交変調器/復調器です。下図のよ
うな変調器にIとQの値を与えることで、IQ平面上の情報を高周波信号に
変換することが出来ます。
┏━━━━┓
I(t) ──→┃I変調器┃──────┐
┗━━━━┛ |
↑cos |
┏━━━┓ | ↓
┃搬送波┃──┤ ┏━━━┓
┗━━━┛┏━━━┓ ┃搬送波┃─→ 直交変調波
┃位相器┃90° ┗━━━┛IQ(t)
┗━━━┛ ↑
↓-sin |
┏━━━━┓ |
Q(t) ──→┃Q変調器┃──────┘
┗━━━━┛ 直交変調器
QAM(Quadrature Amplitude Modulation)
QPSKはIQ平面上の4値をとりましたが、QAMでは、振幅方向にも値を与えるこ
とで、16値、64値、256値、、、などと、より多い値をとって複数のビットを
送ることの出来る変調方式です。16値QAMでは、下図のようになります。
|
○ ○|○ ○
|
○ ○|○ ○
────┼────I
○ ○|○ ○
|
○ ○|○ ○
| IQ平面(後述)上の16QAM
このように多値化が進むと、容易に高速化が出来るように思われます。しか
し、シャノンの法則(Shannon)によると、通信容量には限界があります。
通信容量の最大値 C = Bw*log2(1+S/N) [bps]
すなわち、同一の帯域幅で多値化を行って通信容量を増大しようとしても、
より高い受信S/N比が必要になるため、結果的に、伝搬距離が短くなってしま
うのです。
QAM-OFDM
地上デジタル放送では、OFDMのサブキャリア一つ一つが64値QAMで変調さ
れています。つまり1つのサブキャリアで6ビットの情報が送れることにな
ります。このサブキャリアが1OFDM信号につき5617サブキャリアありますの
で、約5.6MHzの帯域幅にも関わらず、33Mbpsもの情報を伝送する能力があり
ます。(但し、オーバヘッドにより情報伝送レートは18Mbps程度です。)
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