純正IchigoJamプリント基板の基板図:
jig.jp社の純正のIchigoJam基板は、@少ない部品点数、Aハンダ付けの容易さ(DIP部品、適度な部品間隔)、B全信号パターンを片面に配線、C裏面を全面ベタGNDとして耐ノイズ性能も向上させている、D方向に注意しなければならない部品に☆マークを付与しているなど、教育用としてはとても良い作りになっています。
とくにプリント基板(下図)を見るだけで回路が分かる点が最大の特長です。
こどもパソコン「IchigoJam」のプリント基板(市販品)
純正 IchigoJam 回路図 (出典:https://ichigojam.net/)
純正IchigoJamに関する参考情報と当オリジナル基板での対応
純正回路では5VのPS/2を3.3V動作のLPCマイコンに直結しています。このマイコンには5V入力トレラント機能が搭載されており、それを利用しています。この方法は本プリント基板においても継承することにします。
キーボードのPS/2端子への電源供給は規格上、275mA以上の電流が流れないようにしなければなりません。純正IchigoJamでは一見すると保護されていないように見えますが、マイクロUSB変換基板上に100mAのポリスイッチが搭載されており、これにより保護しています。キーボードの電流制限については本プリント基板でも継承し、ポリスイッチ(基板上の「FUSE」と書かれた部分)を搭載できるようにしました。1回目の試作時は2端子の間にGND穴を空け、ここに3端子レギュレータを搭載したり輻射ノイズを低減するためのフィルタを入れたりすることを考慮しましたが、ポリスイッチのリード線が根元で湾曲しており、GNDに接触する懸念があったことからGND穴は廃止しました。
マイコン用の3.3V電源レギュレータに関して、純正IchigoJamプリント基板では左側ピンがGNDの特殊なタイプを用いていました。当オリジナル基板では一般的なピン配列の過電流保護機能の付いたレギュレータで対応することにしました。また、電源の安定化を行うために電界コンデンサ(高さ10mm以下)を実装できるようにしたり、DCDCコンバータタイプの3端子スーパーレギュレータを実装できるスペースも確保しました。さらに通信モジュール等に対応できるように5V系のレギュレータも実装できるようにしました。6VのACアダプタをDCジャックから供給することで5V出力が得られます。ミニUSB端子も実装可能で、USB電源供給にも対応できます。(但しレギュレータの効果なし)
クリスタル(水晶)の両端子にはマッチング用のコンデンサを搭載できるようにしました。20pFの負荷容量のクリスタルであれば33pF程度のコンデンサを実装します。テレビへの表示がうまく出来ない場合はコンデンサの値を10pF〜47pFあたりに変更・調整してみてください。
タクトスイッチのプルアップ抵抗は通常の動作時はマイコン内部でプルアップされているので不要ですが、SLEEP時の割込みに使用するために取り付けてあります。この信号はArduinoのAnalog 0入力から入力することも出来ます。XBeeを使ったときの省電力動作に欠かせない端子です。本プリント基板でも継承することにしました。
純正IchigoJamプリント基板の拡張性に関する課題
純正IchigoJamの拡張IO端子CN3とCN4に関しては、随分と悩みました。元々、この拡張IO端子を利用して液晶シールドやキーパッドシールドを作成しようと考えていたのです。
ところが、IchigoJamの拡張IOでは、なかなか思うようなレイアウトが出来ませんでした。IchigoJamの拡張IOの位置や仕様は学習用としては実は最適なのですが、拡張IOとしては問題がありました
最大の課題は、2つの拡張IOコネクタの間隔、そしてコネクタ配置です。この間隔が中途半端で、広すぎるようで狭すぎます。また、基板の中央にあるのも邪魔です。例えば、無線モジュールやキーパッド、液晶などを搭載しようとしても、これらのコネクタが隅によって欲しくなります。さらに、コネクタだけではバランスが取れず、ビス穴にスペーサを付けなければ保持できないといった課題もあります。拡張IOに5Vが含まれない点も不便です。無線モジュールやモータードライバのように電流を要する拡張IOを作りにくかったのです。
一方、Arduinoのような拡張IOシールドであれば、コネクタが端にあるので、こういった部品の配置が楽になります。また、Arduino用に市販されている拡張シールドの一部が使えれば、ユニバーサル基板シールドやブレッドボードつきのシールドを流用することができると考えました。下図のようなブレッドボードつきのシールドは試作や実験を行うのにとても効率的だからです。ブレッドボードの上下にピンが来るのは、拡張ボード上での学習に良さそうです。
プロトタイプシールドを実装したPersonal Computer基板
その後、新たにIchigoJam Uが登場し、拡張IO端子の間隔が広げられました。部品のレイアウトが、多少、容易になりましたが、大きな部品を載せる場所と被ってしまう課題は解決されていません。
一方、Arduinoのような拡張IOシールドにも欠点があります。それは、マイコン基板上の多くの配線が基板端に向かうので、マイコン基板に関しては、プリント基板を見ても回路図が分かりにくい点です。これは教育用の基板としては最大の課題で、しかも解決のしようがありません。
この問題については断念しました。とはいえ、むしろ、拡張IO基板側の配線は分かりやすくなります。マイコン基板の回路は純正IchigoJamで学習済の子供たちが、拡張IOを学習するには、この形の方が良いはずなのです。
さらに、IchigoJam用の拡張IOも使えるようにすることで、IchigoJam用シールドによる拡張性も確保しました。
以上より、当オリジナルプリント基板では、純正のIchigoJamの拡張IO、IchigoJam Uの拡張IO、そしてArduinoのような拡張IOシールドに対応可能な基板としました。配線の引き回しが複雑になるので、マイコンボード上の回路は学習用の位置づけから除外することにしました。