ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ設計編

同軸ケーブル

作成:2005年01月
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低損失2.6GHz対応S4CFB アンテナケーブル

本ページの内容

テレビ用の同軸ケーブル(アンテナケーブル)の種類や選び方、問題対策、F型接栓、ケーブルの特性などについて説明します。

同軸ケーブル(アンテナケーブル)の種類

同軸ケーブルにはC型とD型の2種類があります。
テレビ用ケーブルはC型です。この型は特性インピーダンスを表しており75ΩをCで表し、50ΩをDで表します。また、Cの前にケーブルの直径[mm]の数字をつけて、3C、4C、5C、7Cなどのように表記します。

同軸ケーブル(アンテナケーブル)の選び方@太さ

同軸ケーブルの長さが長いほど同軸ケーブル内で電波が弱まります。この弱まりの度合いをケーブル損失といい、細いケーブルほど損失が大きい傾向があります。

しかし、直径が太ければ良いと言うわけでもありません。一般に、太いケーブルは、高価な上、屈曲しにく、さらに、過重がかかってチューナのコネクタが破損してしまうこともあります。短い区間であれば、細いケーブルであっても、損失が少ないので、太いケーブルの短所ばかりが目立ってしまいます。
このため、以下のように長さにあわせてケーブルの太さを選択します。

同軸ケーブルの種類と推奨用途
直径 推奨の長さ 推奨の用途
3C 3m以下※ アンテナ部品やチューナ間、ごく短い接続で使用
4C 10m以下 コンセント〜チューナ機器等、メインで使用する
5C 10m〜20m 一戸建てのアンテナ〜コンセント、部屋間
7C 20m〜50m ビル、マンション、集合住宅等の共用配線部
10C〜 50m以上 建物間の構内配線、共聴用架線(電柱の同軸電線)
        ※BSの場合は4Cを推奨

家庭内では多くの場合が4Cケーブルを使用します。屋内で数mの距離にも関わらず7Cや10Cといった極太ケーブルを使用する場合もありますが、ほとんど効果がないと思います。

次節の100mあたりの損失の表をみると、極太の10C-HFLは100mで6dBの損失で、1mだと0.06dBです。一方、一般的なS-4C-FBは1mあたり0.24dBで、極太ケーブルとの差はわずか0.18dBです。条件によっては効果がありますが、まずは無駄な長さを省いたり、分波器や分配器、ブースターなどの使い方を見直すべきでしょう。詳しくは「アンテナ部品の基礎」をご覧く ださい。

なお、BSコンバータ電源を使用する場合は、必ず、BS対応のケーブルを使用してください。古いVHF用の3C−2Vケーブルは劣化によって電源がショートしてしまう懸念が高まります。

同軸ケーブル(アンテナケーブル)の選び方Aグレード

同軸ケーブルの種類には(太さ以外にも)グレードがあります。2重シールドのS-4C-FBというケーブルが使いやすさと性能を保っています。目安として、1〜2dB以上の改善があれば、グレードアップの効果が期待できます。

同軸ケーブルのグレードと損失の一例
グレード JIS表示 損失(UHF,10m換算)
VHF用          3C-2V 保証外
低損失UHF対応      3C-FV 3.2 dB
低損失UHF対応      5C-FV 2.1 dB
低損失2.6GHz対応   S-4C-FB 2.4 dB
低損失BS対応     S-5C-FB 1.9 dB
低損失3重シールド  S-5C-FBL1.9 dB
低損失アルミラミネート 5C-HFL1.5 dB
低損失アルミラミネート 7C-HFL0.8 dB
低損失アルミラミネート 10C-HFL0.6 dB

上記の「損失」は、UHF帯における10mあたりの損失の一例です。例えば1mだと1/10すれば損失が算出できます。100mだと10倍です。また、コネクタ部でも0.数dBの損失が加算されます。

グレードを過信するのは問題です。全ての性能がグレードに応じて向上しているとは限らないからです。周波数やケーブルの長さによって、性能が逆転している場合もあります。

同軸ケーブルのJIS表示(S−4C−FB)

下図は、同軸ケーブルのJIS表示の意味の説明図です。S−4C−FBの場合、BSやCSに対応した、外部導体の直径4mmの同軸ケーブルで、外部導体には銅の網線とアルミ箔が用いられていることが分かります。

対応周波数(BS,CS),外部導体直径,特性インピーダンス(75Ω,50Ω),絶縁体の材料(充実ポリエチレン,発泡ポリエチレン,高発泡ポリエチレン),外部導体の形状(網線,網2重,アルミ)

同軸ケーブル(アンテナケーブル)の問題点

古い住宅等ではUHFに対応していない3C−2Vや5C−2V等の同軸ケーブルが使用されている場合があります。また、経年劣化による適切な性能が得られなくなっている可能性も考えられます。

現在の3C−2Vや5C−2V同軸ケーブルであれば(地上デジタル放送で使用するUHF帯であっても)実力的に使用するできる場合が多いですが、本来の性能としては保証されておらず、また長年の経年変化によって、UHF帯の減衰が大きくなっている場合もあります。とくに、屋外や、断熱されていない屋内に配線されている同軸ケーブルについては、著しく劣化していることがあります。

UHFに対応していない3C2Vのアンテナケーブル
UHFに対応していない3C2Vの同軸ケーブル

ブースターによる対症療法と適切な治療方法

同軸ケーブルが劣化している場合、アンテナを設置しているマスト部に
ブースターを設置する対症療法的な対策と、同軸ケーブルを交換する根本対策があります。

同軸ケーブル(アンテナケーブル)の問題対策
推奨 対策分類 対策方法
× 対症療法 問題のケーブルよりもアンテナ側にブースターを設置
根本対策 問題のケーブルをUHF対応の新しいケーブルに交換

ブースターを設置する対症療法では、全チャンネルが対策できるとは限らず、経年劣化が進んだり、天気や時間帯によって受信が変動したりと、安定しない場合もあります。問題の原因を対策したほうが望ましいことに、変わりありません。また、ケーブルの異常によりブースターが故障したり、発火事故を起こしたりする可能性も考えられます。
とくに、DC電源を同軸ケーブルへ供給する場合は、火災の原因になる懸念が高まるので、必ずケーブル交換による根本対策を行ってください。

ケーブル交換に要する工事費用は、同軸ケーブルの配線方法にもよって大きく異なります。例えば、配管なしに配線されている場合は、ケーブルの入れ替えに手間がかかる場合があります。詳しくは、電気工事店に見積もりを依頼して相談ください。交換が高額となる場合は、例えば、痛みの激しい部分のみを交換することで、費用を抑えることが出来るかもしれません。痛みの激しい部分は、比較的、交換しやすい箇所に配線されている場合が多いからです。ただし、交換しなかった部分に異常があった場合は、かえって割高になってしまいます。

同軸ケーブルと接栓(F型接栓)

同軸ケーブルを機器に繋ぐためには、ケーブルの端をコネクタ状に加工します。下図のような接栓と呼ばれる部品を使用します。

F型接栓,中継器,同軸ケーブル
同軸ケーブルとF型接栓

写真の左上は市販されている状態の接栓、左下が接栓を取り付けた同軸ケーブルです。
右上は中継コネクタで、接栓同士を接続することで、同軸ケーブルを延長することができます。

接栓の加工方法は、下記のページもしくは接栓の説明書をご覧ください。

  ・
一般的なF接栓の加工方法

  ・日本アンテナかんたんF型コネクタ

御注意
接栓の組立後は、外部導体と内部導体がショートしていないかを、 必ず、テスターで確認するように習慣づけてください。
問題が発生した時に、なかなか解析できないだけでなく、BSやブースターの電源がショートすると危険です。

F型接栓の種類

F型接栓はアンテナケーブルに合わせて選択します。例えば、S-4C-FBのアンテナケーブルを使用する場合は、4C-FB対応のF型接栓を使用するのが望ましいです。通常の4C用のF型接栓で接続することも可能ですが、場合によってはアンテナケーブルのアルミの外部導体が接触不良なる恐れがあります。

F型接栓,中継器,同軸ケーブル
F型接栓 3C用(左上) 4C用(右上) 5C用(下)

F型接栓(ネジ式)の締め付け方法

アンテナコネクタにはネジ式のF型接栓と呼ばれるものとワンタッチのものがあります。ネジ式の方が性能が良いと言われています。また、長期間に渡っての使用でも痛みにくい利点があります。

ネジ式F型接栓
ネジ留め式のF型接栓

ネジ締めをスパナやモンキーレンチで締めると機器側のコネクタを破損してしまう恐れがあります。F型接栓の締め付けトルクは、2N・mと決められています。
工具を使用する場合はトルクが決めれる工具を使用して下さい。

手で締める場合は、普通の方が、接栓の六角リングだけを指先で掴んで回転方向だけに力をかければ壊れることはありません。指先がブレない程度に、強く締め付けます。

既製ケーブルの特性

下図はSH社の液晶テレビに付属していた3C−2Vケーブルの特性例です。
本ケーブルは3C−2Vでありながら、UHFにも対応しており、770MHzまでの周波数の減衰量は2dB以内(4mの場合)と良好でした。室内での使用では十分でしょう。

UHF対応3C-2Vケーブル(既製品4.0m)
3C-2Vケーブル(4m)の特性例

下図も同じ液晶テレビに付属していたBS対応の4C−FBケーブルの特性例です。減衰量は、1330MHzまでの周波数で2dB以内(4m)と良好でした。

BS対応4C-FBケーブル(既製品4.0m)
4C-FBケーブル(4m)の特性例


下図はP社のレコーダに付属していた1.2mの規格外アンテナケーブルです。
1.2mと短い範囲では、概ね2dB以内で良好です。仮に4mに換算すると、770MHzで2.3dB、1330MHzだと4dBの減衰があり、4C-FBケーブルの2倍以上の減衰があります。ケーブルそのものの性能は良くありませんが、レコーダーとテレビとの間に使用するには十分です。また、直径が細いので、ケーブルの引き回しも容易です。

レコーダ付属の粗悪な(1.2mの短い)ケーブルの特性
規格外の細い同軸ケーブル(1.2m)の特性例

以上は一例です。用途(使用するケーブルの長さ)に合わせた同軸ケーブルの選択が大切であることが理解いただけたと思います。

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以下は、参考情報です。

海外のPAL型コネクタ

 海外のチューナやテレビに用いれれているPAL型コネクタについて、以下に参考情報を記載しています。

地デジ設計編「同軸ケーブル-海外のPAL型コネクタ

F型接栓,中継器,同軸ケーブル

特性インピーダンス

 同軸ケーブルの特性インピーダンスの計算方法について、以下に参考情報を記載しています。

地デジ設計編「同軸ケーブル-特性インピーダンス

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