ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編 - 符号化

              (作成:2004年04月)      地デジTopへ戻る
              (更新:2005年11月)

符号化とは

  何らかの情報(アナログ、デジタル)を、何らかのデジタル符号に変換する
  ことを、符号化といい、符号化されたものを、戻すことを「復号化」と呼ん
  でいます。

      ┏━━━━━┓            ┏━━━━━┓
    ─→┃ 符号化 ┠─→…‥・伝送・‥…─→┃ 復号化 ┠→
    情報┃エンコード┃符号        符号┃ デコード ┃情報
      ┗━━━━━┛            ┗━━━━━┛
       エンコーダー              デコーダー

  単に映像や画像を音声信号をデジタルに変換するだけでも「符号化」です。
  また、後述の「誤り訂正信号」を付加することも「符号化」です。さらに、
  MPEGやJPEG、AACに「圧縮」することも、「符号化」です。しかし、通常は
  以下のように使い分けています。

        | 元の内容 → 符号化 →  符号  → 復号化 |
  ──────┼──────┼─────┼──────┼─────┼
  誤り訂正  | 情報(符号)|誤り符号化|  符号  | 復号化 |
  画像圧縮伸張| 画像情報 |画像符号化| 画像符号 |画像復号化|
  音声圧縮伸張| 音声情報 |音声符号化| 音声符号 |音声復号化|
  情報圧縮伸張|   情報   |データ圧縮| 圧縮符号 |データ伸張|
  暗号    |  平文  | 暗号化 | 暗号化符号 |暗号復号化|
  変復調   |ベースバンド|  変調  | 変調化信号 |  復調  |
  情報化   | アナログ | AD変換 | デジタル | DA変換 |
  量子化   | アナログ | 量子化 | デジタル |  −  |


誤り訂正符号、誤り検出符号とは

  デジタル放送や、デジタル無線通信では、「無線」や「ワイヤレス」でデジ
  タル通信を行なっており、空間を伝送路として使用しています。空間には、
  明確な伝送路が無いので電波は四方八方に拡散してゆくため、受信する電波
  は非常に弱い上、空間は共用スペースであることから外来ノイズも多いこと
  で、情報が欠落する可能性が非常に高い通信です。したがって、誤り訂正が
  重要な技術になります。誤り訂正は本来の情報の一部に誤りが生じた場合に
  それを修正して正しい情報に戻す技術です。このためには、元の情報に余分
  情報である「冗長」を加える必要があります。

  「ビタビ」という単語を伝えたい時に、誤りが生じて「ビビ」と伝わって
  しまったら、例え「ビタビ」という単語を知っていたとしても、相手に伝え
  ることは、むづかしくなります。
  ところが、「ビタビ」を「ビタビ、度々(たびたび)」と冗長を加えて伝えれ
  ば、「ビビ、タビタビ」と聞こえた場合でも、「ビ」と「タ」の繰り返し
  の規則性から「ビタビ」が伝えたかった文字だと予想することが出来ます。
  さらに、「ビタビ、度々(たびたび)、食びた(たびた)、ビタビ」のように、
  冗長を長くすると、より、伝わりやすくなります。

   送信内容  |ビタビ |ビタビ    |ビタビ
    ↓    |    |       |
   冗長付加  |ビタビ |ビタビ、度々 |ビタビ、度々、食びたビタビ
    ↓    |    |       |
   送信符号  |010 |0101010|0101010101010
    ↓    |    |       |
   誤り発生  |00 |001010|001010101010
    ↓    |    |       |
   受信符号  |000 |0001010|0001010101010
    ↓    |    |       |
   訂正可能性 |ビビ |ビビ、度々 |ビビ、度々、食びたビタビ
    ↓    |    |       |
   訂正可能性 |ビビ |ビビ(!?)  |ビビ(!)

                          「ビ」=0、「タ」=1

符号化率とは

  冗長を付加するということは、情報量は増加してしまいます。上記の例では、
  3文字が7文字や13文字になっています。3文字を7文字で表すというこ
  とは、符号の効率は3/7になるので、符号化率3/7と呼びます。
  つまり、符号化率3/4の畳み込み符号(後述)とは、情報量3を符号量4に冗長
  を付加して、誤り訂正能力を持たせた符号を意味します。したがって、デー
  タ量は4/3倍に増加することになります。


巡回符号(Cyclic Redundancy Checking)

  巡回符号とは、受信信号を、生成多項式G(x)と呼ばれるxによる多項式で除算
  (ここでの演算は、1+1=0とした排他的論理和modulo2演算)した時に、割り
  切れるかどうかで誤りを検出する方式です。
  
  巡回(7,4)符号の生成多項式G(x)=x^3+x^1+x^0の場合について説明します。
  巡回(7,4)符号とは、送りたい信号4ビットに3ビットの冗長(誤り検出信号)
  を付加して、合計で7ビットで送信する方法です。
  7ビットからなる多項式Y(x)は、生成多項式G(x)で除算して余りが0になる
  ように生成する必要があります。元の4ビットの情報に、3ビットの冗長を含
  めて、割り切れるような送信符号を生成するのです。
  例えば、「1010」の符号を割り切るには「011」を付加して「1010011」とする
  ことで、割り切れるようになります。

  情報|冗長|多項式による余りの演算式
  ──┼──┼────────────────────────────
  0000| 000|mod( 0x^6+0x^5+0x^4+0x^3+0x^2+0x+0, x^3+x+1 )=0
  0001| 011|mod( 0x^6+0x^5+0x^4+1x^3+0x^2+1x+1, x^3+x+1 )=0
  0010| 110|mod( 0x^6+0x^5+1x^4+0x^3+1x^2+1x+0, x^3+x+1 )=0
  0011| 100|mod( 0x^6+0x^5+1x^4+1x^3+1x^2+0x+0, x^3+x+1 )=0
  0100| 111|mod( 0x^6+1x^5+0x^4+0x^3+1x^2+1x+1, x^3+x+1 )=0
  0101| 100|mod( 0x^6+1x^5+0x^4+1x^3+1x^2+0x+0, x^3+x+1 )=0
  0110| 001|mod( 0x^6+1x^5+1x^4+0x^3+0x^2+0x+1, x^3+x+1 )=0
  0111| 010|mod( 0x^6+1x^5+1x^4+1x^3+0x^2+1x+0, x^3+x+1 )=0
  1000| 101|mod( 1x^6+0x^5+0x^4+0x^3+1x^2+0x+1, x^3+x+1 )=0
  1001| 110|mod( 1x^6+0x^5+0x^4+1x^3+1x^2+1x+0, x^3+x+1 )=0
  1010| 011|mod( 1x^6+0x^5+1x^4+0x^3+0x^2+1x+1, x^3+x+1 )=0
  1011| 000|mod( 1x^6+0x^5+1x^4+1x^3+0x^2+0x+0, x^3+x+1 )=0
  1100| 010|mod( 1x^6+1x^5+0x^4+0x^3+0x^2+1x+0, x^3+x+1 )=0
  1101| 001|mod( 1x^6+1x^5+0x^4+1x^3+0x^2+0x+1, x^3+x+1 )=0
  1110| 100|mod( 1x^6+1x^5+1x^4+0x^3+1x^2+0x+0, x^3+x+1 )=0
  1111| 111|mod( 1x^6+1x^5+1x^4+1x^3+1x^2+1x+1, x^3+x+1 )=0


リードソロモン符号(Reed Solomon)

  リードソロモンは巡回符号の一つで、ガロア体と呼ばれる特殊な演算方法で
  演算されます。地上デジタル放送では、リードソロモン(204,188)と呼ばれる
  8次元のガロア体GF(2^8)と、原始多項式f(x)=x^8+x^4+x^3+x^2+1が使用
  されています。実際に符号化するTSパケットサイズは188バイトに16バイトの
  冗長を付加して204バイトにしています。
  生成の際は、188ビットの情報の先頭に51バイトの「00」データを付加し、
  239バイトの情報に変換します。これにリードソロモン(255,239)を使って、
  255バイトの符号に符号化した後に、先頭の51バイトを捨てて204バイトにし
  ます。
  このようにリードソロモン(255,239)短縮化してリードソロモン(204,188)を
  実現いることから短縮化リードソロモン符号とも呼ばれています。
  この短縮化リードソロモン(204,188)では、8バイトまでの符号誤りまで訂正
  が可能です。
  リードソロモンの具体的な符号化方法は分からないので当サイトでは省略し
  ています。


畳み込み符号

  畳込み符号は、新しい符号の作成に過去の符号を使うことで信号が誤った場合
  に訂正できる可能性を向上させた符号化方法です。
  ここで、過去の2ビットから新しい1ビットを符号化する場合を考えます。
  過去の2ビットの組合せは、00,01,10,11の4種類があります。このデーター
  がどのように符号化されたかに関係なく、過去のデータによって、現在は、
  過去から4種類の状態を引き継いでいることになります。次に、新しい情報
  を付加する時、この4状態のいづれか1つに遷移しますが、ここで0か1の
  1ビットの状態の遷移先は2種類しかなく、他の2状態には「移りえない」
  ことが分かります。誤りが生じて、移りえない状態に移ったとしても、常に
  同じルールで遷移していれば、受信された情報の全体の中からルールに合う
  状況を探し出すことで、情報の誤りを訂正することが出来ます。
  復号の際、受信系列から様々な状態遷移を想定して、最も送信信号に近い遷
  移方法を検索しなければなりません。これを、最尤符号(さいゆうふくごう)と
  呼び、ビタビが発明したビタビアルゴリズムが有名です。


二重符号化(内符号と外符号)

  地上デジタル放送ではリードソロモンと畳み込み符号の2つの符号化を使用
  しています。電波となる部分を中心として、内側の畳込み符号を内符号と呼
  び、外側を外符号と呼んでいます。

  情報┏━━━┓ ┏━━━┓送信  受信┏━━━┓ ┏━━━┓情報
  ─→┃RS ┠→┃畳込み┠─────→┃畳込み┠→┃RS ┠─→
    ┃符号化┃ ┃符号化┃  電波  ┃復号化┃ ┃復号化┃
    ┗━━━┛ ┗━━━┛      ┗━━━┛ ┗━━━┛

  二重符号化とは、このように2種類の従来の符号化方式を組み合わせることで
  手軽に誤りや雑音に強くする方法です。


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