ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編 - ISDB-T概略

              (作成:2003年10月)      地デジTopへ戻る
              (更新:2005年07月)

ISDB-T 主要パラメータ
       (Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial)

  このページでは国内での地上デジタル放送ISDB-T方式および、ISDB-Tに採用
  されたBST-OFDM方式の代表的なパラメータを示します。
  OFDMについては、「方式編-OFDM」を、また、64QAM等のキャリア変調方式に
  ついては、「方式編-変調方式」を、符号化については、「方式編-符号化
  を参照ください。

             ISDB-T 代表パラメータ

   パラメータ   |技術要件
   ────────┼─────────────────────────
   映像符号化方式 |MPEG-2 Video
   映像フォーマット|1080i, 480p, 480i, 720p, 1080p
   色空間、階調  |YCrCb 4:2:0 8bit階調 (12bit/pixel)
   音声符号化方式 |MPEG-2 Audio AAC (従来のMPEG2-BCの2倍の効率)
   変調方式    |13セグメント BST-OFDM 方式
   キャリア変調方式|64QAM, 16QAM, QPSK, DQPSK (最大3階層)
   誤り訂正方式  |リードソロモン符号と畳込み符号の二重符号化方式
   伝送帯域幅   |約 5.57MHz (=6/14*13)
   最大伝送容量  |23.234Mbps(64QAM,内誤訂正=7/8,GI=1/32時)

             BST-OFDM 代表パラメータ

   パラメータ |  値  |備考(各値の根拠となる計算式など)
   ──────┼─────┼─────────────────────
   ISDB-Tモード| Mode3  |OFDMキャリア数の違いでMode1〜3がある。
   セグメント数|   13  |
   総キャリア数|  5617  |(1セグC数)432 × (セグ数)13 + 1
   キャリア数/S|  432  |1セグあたりのキャリア数(パイロット含む)
   データC数/S|  384  |1セグあたりのデータキャリア数
   帯域幅   |約 5.57MHz|=(総キャリア)5617 × キャリア間隔(125/126)
   キャリア間隔|約0.992kHz|=125/126
   キャリア変調|64(2^6)QAM|他に(2^2)QPSK、(2^4)16QAMがある
   シンボル数 | 204/frame|
   シンボル長 | 1008us |
   GI    |1/8(126us)|他に1/4(252us),1/16(63us),1/32(31.5us)
   フレーム長 | 231.336ms|=(数)204×[(長)1008us+(ガード)126us]
   内誤訂正符号|  3/4  |畳み込み符号、他に1/2, 2/3, 5/6, 7/8
   外誤訂正符号| 188/204 |リードソロモン符号 RS(204,188)
   FFTクロック |約8126984 |=512/63[MHz]
   多重フレーム| 4608  |
   ビットrate/S| 1404.29 |以上条件の1セグあたりのビットレート
   ビットレート|約16.8Mbps|ビットレート(GI=1/8,64QAM3/4,12Segs)

セグメント説明図

                    参考文献:
SHARP 技報 88-5 (2004/4)


モード

  将来のSFN(同一周波数中継)や移動受信などの様々な放送方法に対応す
  るために、OFDMキャリア数の異なるモード1〜3があります。現状の放送
  体系(県域,固定利用)においては、モード3にて放送されています。

     ISDB-Tモード   | Mode 1 | Mode 2 | Mode 3
   ───────────┼─────┼─────┼─────
   総キャリア数     | 1249  | 2497  | 5617
   データキャリア数/seg |  96  |  192  |  384
   キャリア間隔     |約3.968kHz|約1.984kHz|約0.992kHz
   シンボル長      |  252us |  504us | 1008us
   シンボル数      |  204  |  204  |  204
   ガードインターバル  |  −  |  −  |  126us
   最大ガードインターバル|  63us |  126us |  252us
   最大耐干渉能力    | 18.9km | 37.8km | 75.6km

  3つのモードの間では、シンボル数は共通です。しかし、モード1やモー
  ド2ではキャリア数が少ない分、一つのキャリアの帯域が広くなります。
  その分、シンボル長が短くなり、同じ比率でガードインターバルを設定す
  るとガードインターバルも短くなり、遅延波への耐干渉能力が低下してし
  まいます。
  前出の参考文献からもガードインターバル126us以上(距離37.8kmまでの遅
  延波による耐干渉能力)が必要のようで、モード3が選ばれています。

セグメント

  13セグメントとは、1つの放送波を13に分けて使用することが出来るという
  意味です。つまり、地上デジタル波1チャンネルを13の区画に分けて使用し
  ています。ハイビジョン画質(HDTV)の映像には12セグメントが必要なので、
  13セグメントの1つの放送波の殆どのセグメントを使用して放送しています。
  また、DVD相当の標準画質(SDTV)で4セグメントで放送できるので、1つの
  放送波で最大3チャンネル分の標準画質の映像を放送することが出来ます。

              | HDTV画質 | SDTV画質 | 携帯画質
   ───────────┼──────┼──────┼──────
   必要なセグメント数(例)|12セグメント|4セグメント|1セグメント
   データキャリア数(例) |  4608  |  1536  |  384
   情報レート   (例) | 約16.8Mbps | 約5.5Mbps |約300kbps※

                ※固定受信用の放送とパラメータが異なる

  したがって、放送局はハイビジョン画質1本+携帯画質1本とか、従来画質
  3本+携帯画質1本のように、放送局の意図によって自由に選ぶことが出来
  るようになっています。もちろん、13セグメント全てを使って、より高画質
  なハイビジョン放送を行うことも可能です。

階層

  各セグメント毎に異なる変調方式を最大3方式まで使用することが出来ます。
  それぞれのセグメントの集まりを階層と呼んでおり、現在は、ワンセグ用と
  ハイビジョン映像用の2階層で放送されています。

  下図のようにA層(A.Layer)からC層(C.Layer)までの3階層が定義されてい
  て、このうちのAとB層の2層が異なる変調方式で使用されていることが分
  かります。

放送受信パラメータ例

各階層ごとの放送受信例
階層 用途 変調方式 内符号 時間I セグ数
A層 ワンセグ(移動) QPSK 2/3 8 1
B層 通常受信(固定) 64QAM 3/4 2 12
C層 未使用 - - - 0

内符号=畳み込みによる誤訂正符号, 時間I=時間インターリーブ, セグ数=セグメント数



ガードインターバル(GIまたはG)

  元々、OFDMの一つ一つのキャリアは遅延によるシンボル間干渉に強いの
  ですが、1つのシンボルの中に複数のキャリアが入っているOFDMの性質上、
  キャリア毎に異なる遅延が生じた場合、キャリアによっては、前シンボルが
  ズレ込んで来る恐れがあります。
  元々、キャリア毎で干渉しないOFDMですが、遅延したキャリアと、遅延
  しなかったキャリアが干渉してしまい、復調できなくなってしまうのです。
  このような遅延を周波数選択性の遅延と呼んでいます。
  ISDB-Tでは、周波数選択性の遅延による耐干渉能力を高めるために、下図の
  ように、シンボルとシンボルの間にガード時間を挿入しています。
  受信機では、このガード区間の情報を無視することで、あるキャリアだけが
  遅延が生じた場合でも、このガード区間内であれば、遅延が無視されるので
  正しく受信できます。なお、ガードインターバル区間にはシンボル内のデー
  タがコピーされて挿入されていますので、あるキャリアがズレても情報が欠
  落することはありません。

ガードインターバル説明図

インターリーブ(I)

  インターリーブとは符号や周波数を入れ替えることで、誤りが発生した時に
  誤った符号を分散させて誤り訂正を行いやすくする方法です。
  地上デジタル放送では、シンボル単位で入れ替える時間インターリーブや、
  サブキャリアを入れ替える周波数インターリーブがあります。

同期

  放送を受信するには、適切なタイミングで信号を読み取らなければなりませ
  ん。ガードインターバルが挿入されていたとしても、これは遅延に対しての
  補償が目的ですので、1008usの解析区間は、正確に合わせる必要があります。
  このように受信のタイミングを調整することを「同期をとる」と言います。

  シンボルの同期は、ガードインターバルを利用して同期をとります。ガード
  インターバル区間にはシンボル内のデータがコピーされていますので、この
  コピーにより受信信号の自己相関が生じることを利用します。
  具体的には、コピー元の信号部分とガードインターバルとの時間差(1008us)
  で自己相関 Sum( s(t+1008us)*s(t) )がピークになる点がガードインターバ
  ルの正確な開始点となります。

  しかし、これだけでは、5617ものサブキャリア毎の正確な同期は、とうてい
  取ることが出来ません。そこで、5617サブキャリアのうちの1割以上を占め
  る625サブキャリアに規定のパイロット信号を埋め込んで、正確な同期をとっ
  ています。

ARIB標準規格書(
2008年4月21日)

  ARIB標準規格書が一般公開(無料)されることになりました。

  地上デジタル放送に関連する主要な規格書

    ARIB STD-B31 地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式
    ARIB STD-B25 デジタル放送におけるアクセス制御方式(B-CASカード)
    ARIB TR-B14  地上デジタルテレビジョン放送運用規定

             http://www2.arib.or.jp/johomem/new/riyou.html

ISDB-TSB (ISDB-T for Sound Broadcasting)

  地上デジタル音声放送(地上デジタルラジオ放送)の規格として、ISDB-TSBが
  策定されています。詳しくは「方式編 - ワンセグ概略」を参照ください。

ISDB-Tmm (ISDB-T for Mobile Multimedia)

  現在の地上波アナログ放送終了後に205MHz〜222MHzの17MHzの周波数を使用
  した携帯電話向けの放送サービスが計画されています。将来の周波数につい
  ては、「基礎編-電波と周波数」を参照ください。
  そこで、ISDB-TのワンセグとISDB-TSBのラジオをベースとした新しい規格が
  検討されています。ISDB-TワンセグとISDB-TSB、ISDB-Tmmの3つに対応した
  受信機が、携帯電話に内蔵できる小型で実現できるようになります。

関連ページ

  方式編 - ワンセグ概略      1セグメント放送 地上デジタル音声
  方式編 - OFDM        シンボル間干渉 OFDMの原理 復調
  方式編 - 変調方式        ASK,BPSK,QPSK,QAM,IQ平面,直交変調
  方式編 - 符号化         符号化 誤り訂正符号 RS 畳込み符号
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  方式編 - Blu-rayディスク     Blu-ray (BD-RE,BD-R,BD-ROM)

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