ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ方式編 - 受信チューナー
(作成:2005年01月) 地デジTopへ戻る
液晶テレビAQUOSの Wチューナー(右上) アナログ(左下)
チューナー構造
以下にチューナの構造のブロック図を示します。
アンテナ テレビ
入力┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓出力
○→┨RF部┠→┨ADC┠→┨FFT┠→┨復号部┠→┨DAC┠─○
┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛
↑AGC,FREQ ↑FFT窓位置 ↑復号
| | |パラメータ
| ┏━━┷━━┓ |
└───────┨ 制御部 ┠───┘
┗━━━━━┛
RF部:物理チャンネル選択、信号増幅を実施しベースバンド信号を出力
ADC:アナログ信号をデジタル(ベースバンド)信号に変換する
FFT:OFDMベースバンド信号を復調してストリーム信号に変換する
復号部:MPEG2復号(デコード)しデジタルビデオ信号を出力する
DAC:ビデオ信号をアナログビデオ信号に変換し、D端子へ出力する
ここでは、アンテナ入力からテレビ出力までを5つのブロックに分けており、
RF部の出力信号を、ベースバンド信号、ADCの出力をデジタルベースバ
ンド信号(又は、単にデジタル信号)、FFTの出力をストリーム信号、復号
部(すなわちMPEG2デコード部)の出力を、デジタルビデオ信号と呼んで
います。
アンテナから入力された地上デジタル波は、RF部にで物理チャンネルが選
らばれ、また、増幅されます。そして、ADCでデジタル変換され、FFT
でOFDM復調され、復号部で画像信号に変換され、DACによってアナロ
グ信号としてテレビに出力されます。
制御部は、チューナのシステム制御を行っている部分です。RF部に対して
は、主に、増幅度(AGC:自動利得制御)の制御と、周波数(FREQ)の設定を行い
ます。FFT部に対しては、ガードインターバルの範囲でFFT解析区間の
位置を調整しています。また、ブロック図にはありませんが、信号の同期を
とるための制御を行うことでストリーム信号が取り出しています。そして、
ストリーム信号を映像に復号する為の制御も実施しています。
Wチューナー部 (左側のブロックは3分配器)
Panasonic ENA94B**BTF(TTM7J)
RF部の構造
下図は、前節のRF部の中身となるRFブロック図です。
アンテナ ベースバンド
入力┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓出力
○→┨BPF┠→┨LNA┠→┨MIX┠→┨LPF┠→┨AMP┠─○
┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛
↑ ↑ ↑
| | |
| ┏━┷━┓ ┏━━━┓ |
| ┃VCO┠─┨PLL┃ |
| ┗━━━┛ ┗━━━┛ |
|RF_AGC ↑FREQ |IF_AGC
BPF:地上デジタル以外の信号を取り除くバンドバスフィルタ
LNA:RF信号を低雑音で増幅(増幅度=RF_AGC)するローノイズアンプ
MIX:特定の物理チャンネル(FREQ)だけを増幅するミキサ(混合器※)
LPF:不要な物理チャンネルの信号を取り除くローパスフィルタ
AMP:ADCに入力可能な電圧まで増幅(増幅度=IF_AGC)する
VCO:特定の物理チャンネル(FREQ)を発生させる周波数発生器
PLL:VCOの周波数を設定して一定に保つための周波数制御
※アンテナ部品の混合器とは働きが違うので注意
アンテナから入力された電波のうち、不要な周波数の電波を取り除いてから、
増幅し、周波数を選択して、さらに、増幅する回路となっています。
受信感度で重要になるのは、上図のアンテナ入力から、ベースバンド出力ま
でのトータルNF(雑音指数)です。
他にも、LNAの強入力特性、相互変調,混変調、周波数選択度などがRF
部に要求されます。
ダイレクトコンバージョン方式(新方式)
前節のブロック図ではVCOが一つのダイレクトコンバージョン方式の例を
あげています。この場合のVCOの発振周波数は470〜770MHzにな
ります。
VCOから発せられる電力はミキサに混合する際に、受信電力に比べて大き
な電力に増幅されますので、VCOの出力がアンテナに回り込み、ミキサに
再混入するセルフミキシングが発生します。したがって、通常は、セルフミ
キシングを防止する為に、ハーモニックミキサ方式やローIF方式と呼ばれ
る方式を採用して受信信号とVCOの発振周波数が完全には一致しないよう
工夫しています。
ハーモニックミキサ方式では、VCOの発振周波数を半分にして高調波成分
でミキシングします。発振周波数を2倍もしくは4倍にする方法もあります。
ローIF方式は、受信信号とVCOの周波数を出来るだけ近接させる方式で
す。これらは旧式のスーパーテロダイン方式(次節)に比べてRF部の回路が
簡単になりますが、チャンネルを選択するフィルタが挿入されない為、隣接
チャンネルからの耐干渉能力が弱くなります。さらに、相互変調の影響も、
受けやすくなります。隣接した複数の他局が、受信したいチャンネルに干渉
波を発生させる通常の相互変調だけではなく、周波数差分の信号が、MIX
から出力されてきて、混じってしまうためです。
スーパーヘテロダイン方式(旧方式)
入力┏━━┓ ┏━━┓ ┏━━┓ ┏━━┓ ┏━━┓ ┏━━┓AMPへ
○→┨BPF ┠→┨LNA ┠→┨MIX ┠→┨FIL1┠→┨MIX ┠→┨FIL2┠→
┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛
↑ ↑
┏━┷┓ ┏━━┓ ┏━┷┓
┃VCO1┠─┨PLL ┠─┨VCO2┃
┗━━┛ ┗━━┛ ┗━━┛
上図の従来のスーパーヘテロダイン方式は、2つのVCO、2つの狭帯域な
IFフィルタが必要な反面、各段の周波数に応じたフィルタによって性能を
調整しやすいため、優れたRF特性を出しやすい利点があります。
1stIF周波数は57MHz等を使用し、帯域幅は1チャンネル分の5.57MHzが
ギリギリ通過できる5.8〜6.0MHzの狭い帯域幅のフィルタを使用します。こ
れにより、隣接チャンネルなど、近い周波数からの干渉波が除去できます。
2ndIFでは4MHz(1〜7MHz)に変換してベースバンド信号とします。
ここでも狭帯域のベースバンドフィルタを通過して、より離れた周波数から
の干渉波を除去してから、AD変換します。
唯一の問題はイメージ妨害です。MIXは受信波とVCOの周波数の差を出
力しますので、実際に受信してしまう周波数は2周波が存在します。希望し
ない周波数をイメージ周波数と呼んでおり、入力のBPFで十分に抑制して
おく必要があります。言い換えれば、イメージ周波数を抑えれば、高性能化
が容易に図れるのが長所と言えます。
しかし、多数のフィルタが必要なので、小型化や低コスト化が難しい課題が
あります。古いスーパーヘテロダイン方式が高性能製品の宣伝になる日が、
くるかもしれません。
また、特殊なADCを使って、1stIFの信号を直接AD変換して実現する
シングルIF方式も実用化されており、類似の周波数変換とフィルタ処理を
デジタル信号処理で実現するものもあります。
関連ページ
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資料編 - 受信感度比較 PanasonicとSHARPのチューナ性能比較
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