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炭素繊維カーボンファイバーを使ったブラシ式のレコード用クリーナー

概要

炭素繊維(カーボンファイバー)を使ったブラシ式のレコード用クリーナーが販売されています。しかし、中には生命や健康に関わるリスクの高い製品もあります。使い方を誤るとレコードを傷めるリスクもあります。

本稿では、正しく使うための製品の注意点を説明します。

ブラシのイメージ図(「いらすとや」のイラスト素材を元に改変して使用)

炭素繊維を使ったブラシ式クリーナー

アナログレコードの現役時代にはなかった最新のものです。炭素繊維は導電性があります。また、レコード針の先端よりも細い素材です。これらにより、静電気の除去能力と、溝の奥のホコリの除去能力に長けています。

しかし、万が一、炭素繊維が抜けると生命や健康に関わるリスクがあります。しかも、1本の繊維は肉眼ではほとんど見えないので因果関係を立証することは困難です。

また、「曲がるダイヤモンド」と言われるくらいの硬度もあり、取り扱い方を誤ると、レコードを傷めます。

購入する場合は、繊維が抜けた場合に適切な対応が可能なメーカーの製品を購入するようにしてください。

炭素繊維は細くて軽い

炭素繊維(カーボンファイバー)は直径10μm以下と細く、比重は2程度と軽く、繊維方向の硬度が高い素材です。髪の毛の太さにするには100本近く束ねる必要があり、同じ長さの髪の毛の軽さよりも約50~60倍も軽い計算になります。

髪の毛(上)と、炭素繊維(下)

炭素繊維は黒色をしています。束になっていると黒色に見えます。ところが、肉眼で1本だけ見えたときは白色です。これは光の反射です。肉眼で見えるには、高いコントラストが必要で、光の反射なしには見えにくいのです。黒い繊維が1本だけ見つかったとしても、それは何本か束になった繊維です。もちろん、顕微鏡を使えば1本でも黒色であることが分かります。

炭素繊維は電気を良く通す

炭素繊維は長さ方向に対して良く電気を通します。断面方向は劣るものの繊維が細いので、長さ方向が支配的になります。

一例として、抵抗率1E-6 Ω・m、断面積78μm2、長さ1cmで計算すると130Ωくらいになります。ところが、実際にテスターで測ると1Ω以下でした。レコード用クリーナーには低抵抗の炭素繊維を使用しているようです。

炭素繊維は電気を良く通す

炭素繊維が抜けると危険

前述のように炭素繊維は細くて軽い素材です。このため、皮膚に付着したり、気流で浮遊した繊維を吸い込んでしまって体内に留まったりして健康を阻害するリスクがあります。体内で分解されることもありません。

また、炭素繊維は導電性の高い素材です。万が一、家電製品の内部に入ってしまうと、回路がショートし、火災の原因にもなり、生命に関わる事故のリスクもあります。

炭素繊維は見えない(ことが多い)

繊維の束は肉眼でも確認できます。しかし、繊維1本だけだと肉眼では見えないことも多いです。このため、抜けていることに気づかない課題や、健康被害や火災が発生しても、原因の特定は困難である課題があります。

もし1本でも抜けていることが分かったら、すでに大量に抜けてしまっており、その一部は床に落ちている可能性が考えられます。窓を開けていた場合や、抜けた後に歩き回ってしまった場合は、家中に散乱しているかもしれません。すぐに本体をビニール袋に隔離し、部屋中を十分に清掃してください。

皮膚にかゆみを感じた時

皮膚にかゆみが感じられたときは、流水で良く洗ってから、取扱説明書を良く読んで処置してください。何本も抜け落ちていることが分かっていて、かゆみが継続するなど、リスクが高いと感じた場合は、必ず医師に相談してください。

近くに家電製品があった場合

抜け落ちた炭素繊維が気流などで浮遊し、家電製品の中に入ってしまうと、容易には取り除けません。とくに、アンプなどの空気穴のある製品を使い続けるのは危険です。繊維はほとんど見えないので、エアーダスターを使っても残留している懸念は払拭できません。部品レベルまで分解してくれる業者に清掃してもらうか廃棄することになります。家電製品からは離れて使うようにしましょう。

抜け落ちた炭素繊維は、レコード盤に残ることもあります。帯電しないので、レコードプレーヤーの内部に入り込む恐れもあります。その一方で、溝の中に入り込んだ炭素繊維は、残留する場合もあります。レコード再生後に、溝から這い上がり、レコードプレーヤーの内部に入ってしまうことも考えられます。

炭素繊維は実は硬い

炭素繊維は方向によって構造が異なり、繊維方向に対してはダイヤモンド並みの硬さを持たせることも可能です。一方、断面方向については柔らかいので、切断や加工は容易です。方向によって異なる硬さと柔らかさを備えている点に特長があります。他のブラシの毛や髪の毛も似た特長がありますが、レコードを傷つけるほどの硬度はありません。

取り扱いを誤るとレコードを傷める

1本の炭素繊維はレコード針よりも細く、硬度も高い特長から、それを束ねたブラシは無数のレコード針です。

レコードに強く押し付けるとレコード溝内の信号が摩耗します。あるいは内周や外周に向かって動かすと、レコードに無数の傷が入ります。レコード針を落とすのと同じように、丁寧に扱う必要があります。

取扱説明書を良く読まないと、失うものが多い製品です。

帯電しないのでホコリがレコード盤に残る

レコードの溝の奥まで届きますが、炭素繊維は帯電しないので、ホコリは吸着しません(油分を含んだホコリは吸着)。また、炭素繊維が削り取ったレコード溝壁の破片も、レコード盤に残留します。炭素繊維で清掃後、精製水で水洗いするか、古いベルベット式のクリーナーで除去すると良いでしょう。

ただし、炭素繊維の抜け落ちがいつ発生するか分からないので、普段、使用するベルベット式のクリーナーとは別のものを用意したほうが良いでしょう。炭素繊維はベルベットには付着しにくいですが、もし付着した場合は他のレコード盤を汚染する可能性もあり、厄介です。

考察

日本の事情にあっているかどうか

筆者が知る限り海外メーカー製のものしかありません。日本の事情や日本人に合わせた国内メーカー製のものが発売されるまでは、待った方が良いと思います。

日本は部屋が狭い住宅が多いので室内の空気が汚染されやすい事情があります。また、室内や建材、家財に燃えやすいものが多くあります。実際、除菌機能付きエアコンや空気清浄機が普及しており、また電気用品安全法では家電による火災に対する厳しい規制が定められています。

さらに、家庭によっては畳や床に布団を敷いて寝る習慣もあります。この場合、落下した炭素繊維を吸い込むリスクはとても高くなります。

これらの事情から、炭素繊維が抜けることによる健康へのリスクや火災へのリスクは他国よりも高いと考えられます。

したがって、現時点では、炭素繊維のクリーナーよりも安全と思われる下図のような製品をお奨めします(筆者は下記製品のメーカーの関係者ではありません)。

お奨めするのは安全なベルベット式のクリーナー(左)を使うこと。静電気対策は、帯電した時(ノイズが増えた時)に静電気除去スプレー(右)を使えばよい。

極端に恐れる必要はない

ウィルスと同じく、我々は見えないものに対して恐怖を感じます。

例えば食品に炭素繊維が混入した場合を考えてみてください。炭素繊維そのものに毒性はありません。肺に入らなければ、多くの場合は排泄されることが期待できます。つまり、浮遊しなければ健康へのリスクは下がります。

軽いといっても比重は2です。帯電しないのでホコリの付着で比重が下がることも少ないです。このため、気流が無ければ、すぐに床に落下します。

落下した炭素繊維については、オーディオルームでは専用のスリッパを使用し、他の部屋との行き来で広めないようにします。もちろん、小さなお子様などは既にオーディオルームに入れないようにしているでしょうから、スリッパだけで対策できるでしょう。

家電についても、例えばACアダプタの多くは密閉されています。開口部があっても異物が混入しにくい構造になっています。ただし、オーディオアンプについてはリスクが高いです。しかも、通常、レコードの近くにあります。炭素繊維を扱う場合は、浮遊した炭素繊維がアンプ内に入らないように、ラックの扉を閉めた状態で作業を行うなど、留意すれば防げるでしょう。

by bokunimo.net

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