ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ設計編 - アンテナ測定

              (更新:2005年03月)      地デジTopへ戻る

測定の概略

  まず、アンテナ利得の測定方法について、全体の流れを説明します。アンテ
  ナ利得を表す「dBd」は、ダイポールアンテナと比較したものです。したがっ
  て、アンテナ利得を測定するには、ダイポールアンテナと比較するのが、最も
  簡単で正確に測定することが出来ます。
  ここでは、ダイポールアンテナを製作し、利得が0dBdとなるよう調整した
  「標準ダイポールアンテナ」を使って、アンテナ利得を測定する方法を、
  説明してゆきます。

ダイポールアンテナの設計方法

  ダイポールアンテナは、下図のように、同軸ケーブルの中心線(中心導体)と、
  網線(外部導体)を、それぞれ、15cmの銅線で引き出して、全長30cmの長さにす
  ることで、簡単に作ることが出来ます。
  引き出した銅線をアンテナ素子(エレメント)と呼び、空間中の電界があると、
  このアンテナ素子の両端に電位差が生じ、電波が、同軸ケーブルの中に流れて
  ゆきます。
  アンテナ素子を銅線と書きましたが、電気を通す金属であれば、アルミでも、
  鉄でも、かまいません。なるべくなら、針金のように、形状が維持できるも
  のが、使いやすいと思います。

     |←─────── λ/2(=30cm)──────→|
                        
      ━━━━━━━━━━┐┌━━━━━━━━━━
                ││←中心線
             網線→┠┴┨
                ┃同┃
                ┃軸┃
                ┃ケ┃
                ┃│┃
                ┃ブ┃
                ┃ル┃
                ┃ ┃

  さて、アンテナ素子は15cm×2本で全長30cmと書きましたが、これは、受信
  したい電波の波長の半分(λ/2)からきています。

    アンテナ全長 = λ/2 = 300/FREQ/2 [m]  但し 周波数:FREQ[MHz]

  ところが、実際のダイポールアンテナがアンテナとして動作する時の全長は、
  30cmよりも、短くなります。この原因は2つあり、一つは、インピーダンス
  変換によるものと、もう一つは、絶縁物による波長短縮です。
  まず、ダイポールアンテナのインピーダンスについて説明します。ダイポー
  ルアンテナのインピーダンスは、以下のようになります。

    ダイポールアンテナのインピーダンス = 73.13 + 42.55i [Ω]

  この約40iは、12nHのコイルを示しており、およそ2cm分の線長に相当します。
  つまり、同軸ケーブルの75+0i[Ω]と比べると、2cm分だけ長すぎるのです。
  そこで、全長を30cmから28cmに短くすることで、インピーダンスが合います。
  また、通常、アンテナ素子に銅線の被覆があったり、針金ハンガーのように
  ビニールで保護されています。このような、誘電体の中を電波が伝搬する際
  は、波長が短くなりますので、28cmでも、まだ、長いということになります。

  以上の2つの要因によって、アンテナ素子の長さは30cmよりも、短くする必要
  があります。
  他にも製作上のバラツキやアンテナ素子の太さの影響などを考慮して、通常は、
  後に調整する必要があります。したがって、通常は、まず、全長30cmのアン
  テナを作成しておき、後で、少しづつ、短く切りながら、調整してゆきます。

  なお、30cmというのは、あくまで、500MHzのアンテナの場合で、アンテナの
  全長は、周波数によって、異なります。しかも、ダイポールアンテナでカバー
  できる周波数の幅は、およそ5%〜10%です。それを超えると、利得が下がっ
  てきます。したがって、どのチャンネルに基準を合わせるかによって、長さが
  変わってきます。
                製作方法について:「設計偏-自作アンテナ

標準ダイポールアンテナの調整方法

  30cmのダイポールアンテナを製作したら、さっそく設置して、最も受信強度
  が得られる方向に向けます。ここでは、CNではなく、受信電力指標やIF_AGC
  を見ながら調整します。(資料編 - 受信品質確認方法)
  そして、今度は、アンテナ素子の両端を、少しづつ、切ってゆき、受信強度
  が最も高くなるところで、切るのをやめます。
  通常は、ほとんど変わりませんので、両方を1cmづつ切った時点で止めておい
  ても大きな問題はありません。ただし、切り過ぎて、利得が下がってしまった
  場合は、作り直す必要があります。
  以上の調整で、ダイポールアンテナの利得が、0dBd (+2dBi)となります。
  このように調整されたダイポールアンテナを「標準ダイポールアンテナ」と
  呼んでいます。なお、市販の標準ダイポールアンテナは、より、高い精度で
  作られており、また、予め利得が測定されています。

アンテナ利得の測定方法

  次に、作成した0dBdの標準ダイポールアンテナ(以下、標準アンテナ)を使っ
  て、八木アンテナの利得を測定する方法を説明します。

  まず、標準アンテナを地上デジタルチューナに入力して、受信強度を測定し
  ます。もちろん、標準アンテナの方向は、最も、入力レベルが高い方向に、
  合わせておきます。

   ┏━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━┓
   ┃標準アンテナ┃→┃地上デジタルチューナ┃
   ┗━━━━━━┛ ┗━━━━━━━━━━┛

  次に、測定したい八木アンテナに置き換えて、減衰器(アッテネータ)を挿入
  して、受信強度を測定し、標準アンテナで測定した値と同じになるように、
  減衰器の減衰量を調整してゆきます。したがって、たくさんの種類の減衰器
  を作っておく必要があります。
  そして、チューナでの測定値が同じになった時の減衰器の減衰量が八木アン
  テナの利得になります。

   ┏━━━━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━━━━━━━━┓
   ┃八木アンテナ┃→┃減衰器┃→┃地上デジタルチューナ┃
   ┗━━━━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━━━━━━━━┛

  減衰器の作り方は、こちらにありますが、簡易的には、減衰器が無くても、
  測定することが出来ます。
  八木アンテナに変更した時に、チューナが示す[受信電力指標]又は[IF_AGC]
  の変化量に合わせて、利得を求める方法です。

  例えば、Panasonicの受信電力指標が30→35と上がれば、およそ5dBdであるこ
  とが、分かります。また、SHARPのIF_AGCが110→100と下がれば、5dBdです。
                (SHARPは受信強度が強いほど値が小さくなる)

                     |変化量
            ─────────┼───
             Pana 受信電力指標|+1.0dB
             SHARP IF_AGC   |-0.5dB

  但し、特に、Panasonicのチューナは、40以上の測定値が一定増加では無いの
  で、少なくとも、5dBと10dBの減衰器を作っておいて、減衰器を使った方法と
  受信電力指標変化の方法の両方を組み合わせて測定する方が良いでしょう。


落雷や落下などに御注意

  落雷は火災等の大きな事故に繋がる場合があります。また、高所作業を伴う
  場合は、作業時のご自身の落下や、設備の落下などの事故にも備える必要が
  あります。安全面には十分に注意してください。

  いかなる事故や損害が発生しても、当方は、一切の責任を負いません。


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