このページでは、CQ出版「地デジTV用プリアンプの実験」の概略、補助情報、そして性能改良のための変更点などを紹介しています。 発行者:CQ出版社 書 名:地デジTV用プリアンプの実験 付属品:プリアンプ基板3種,インジェクタ基板,ディテクタ基板 ※部品は別売りで、はんだ付けが必要です。 著 者:国野 亘、鈴木 憲次 / 共著 発行日:2009年5月15日 初版発行 備 考:B5判 96頁、ISBN978-4-7898-1254-2、税込定価3,360円 ・[PR] 送料無料のamazon等でお買求めください。 ・[PR] CQ出版社の立ち読みサンプルへ/紹介ページへ |
本紙の付録基板に部品を取り付けることで、5種類のプリアンプ(ブースター)の実験が出来ます。基板は3種類ですが、据置型ブースター基板とアンテナ直下型ブースター基板は、それぞれ2種類のICを載せれるようになっています。ここでは、基板(2)にMAR-8を、基板(3)にGALI-74を使用した場合の特性を比較しました。
雑音指数NFは(1)ラインブースターが最も良好でした。次いで据置型、直下型と悪くなってゆきます。しかし、耐歪み特性を示す最大出力レベルは、その反対になっていて、(1)ラインブースターは(3)直下型ブースターよりも12dBも低いことがわかりました。また、最大出力レベルが高い方が、消費電流も増加しています。なお、本実験での最大出力レベルは、2信号による相互変調歪みでDU比30dBを確保できる出力レベルとしており、また、消費電流は増幅部のみの測定値です。 |
ラインブースターの歪み特性(最大出力レベル)が低かったので、バイアス電流の調整によって約5dBの向上を図り、据置型ブースターと同等の出力レベル+8dBmを得ました。この変更に伴って、消費電流が約7mAに増大しますが、雑音指数が劣化しないことも確認しました。 また、入力のハイパスフィルタ(HPF)のカットオフ周波数を10MHzから100MHzに引き上げて、低周波数のノイズ耐性を向上させました。 さらに、安価なトランジスタを使用した回路にも関わらず、集積ICを使用した据置型ブースターの回路部品コストとのコスト差が76円(一例)しか変わらなかったので、LEDやヒューズといった付加機能を削減し、126円(一例)のコストを削減しました。これにより据置型ブースターよりも202円(一例)のコスト差を出すことができました。但し、ヒューズを削減していることから、電源の供給元に同等の役割を果たす保護回路が必要です。
下表はトランジスタ2SC3355を取り扱っているパーツ店と価格の比較表です。価格や取扱状況は変動しますが、部品購入時の参考情報として使用してください。
上記の他にもネットオークションで取引されている場合があります。 歪み特性の改良の他にも周波数特性を広げる改良があります。トランジスタの入力整合とローパスフィルタを兼ねたコンデンサC2の値を小さくすることで、より広範囲の周波数に対応することが出来ます。しかし、利得や雑音指数は、若干、低下してしまうトレードオフの関係にあります。 したがって、広帯域なプリアンプを製作したいということであれば、本書の据置型ブースターかアンテナ直下型ブースターを製作するほうが、良いでしょう。(トランジスタを使った場合、様々な特性に変更しやすい利点がありますが、専用の集積IC並みの性能を出すには、より良いデバイスや回路のノウハウが必要です。) 下表は、C2を取り外し、出力側の整合コンデンサC4とコイルの微調整を行って、なるべく広帯域にした場合の変更例です。利得の低下は出力の整合で改善していますが、雑音指数が低下したり、動作が不安定になったりする場合があります。
広帯域化前後の利得(ゲイン)比較 広帯域化前後の整合度(反射損失)比較 |
アンテナ直下型ブースターの雑音指数が最も悪かったので、性能を改良する検討を行いました。改良の結果、据置型ブースタと同等の雑音指数2.5dBが得られるようになり、また回路部品コストも約273円(一例)を削減できましたので、改良方法を説明します。
まず、入力部のトランスで約0.8dBの損失があることが判明しましたので、入力トランスを取り外しました。そして、入力整合を合わせるために、500MHzで整合する整合回路を入力フィルタ部に合成しました。回路の変更はコンデンサ1つだけで、インダクタの定数(20nH)は変更不要です。 次に、出力についてもトランスを外し、500MHzで整合する整合回路を追加しました。この出力整合回路のインダクタが入力フィルタのインダクタと結合する懸念があるので、入力フィルタのインダクタの配置を90度回転しました。多少の入力フィルタの特性の劣化があるかもしれませんが、出力側に整合回路を設けたことでフィルタの効果があり、集積アンプの後段の耐性が強くなり、総合的に向上させられるものと考えました。 さらに、入力フィルタのインダクタを回転させたことによって、チョークコイルをアキシャルリード型に変更することが容易になりました。 下図は、性能の改良と回路部品のコスト削減したアンテナ直下型ブースターです。アンテナケーブルも直付けしました。 性能改良後のアンテナ直下型ブースター |
付録基板「ディテクタ」の性能改良方法について説明します。このディテクタ回路は2つのダイオードD1とD2を使用しており、それぞれが電力を検波していましたが、検波した電圧を出力しているのはD2のみでした。 D1で検波した電圧を加算するためには、コイルL1に流れる直流をカットする必要があり、L1と直列に100pFのコンデンサを追加し、より大きな電圧が出力できるように改善しました。 下図はコンデンサC5(100pF)を追加したパワーディテクターの回路図の一部です。本書61ページの図3-18に改善箇所を書き入れてください。
C1の値も合わせて変更しています。C1を2pFに変更することで、若干の改善が図られますが、帯域は狭くなるのでインダクタL1での調整の感度が高くなります。調整方法は本書64ページに記載していますが、自信の無い方は変更しない方が良いでしょう。 また、回路図ではL1の値も変更していますが、こちらは本書の回路図に書かれた数値の誤りです。本書62〜63ページの説明と製作図や写真にしたがって製作すれば、コイルのリード部込みで22nH前後で仕上がっていますので、コイルについては、本書どおりに製作すれば、まず、問題ありません。
ここから、C5の追加方法を写真にしたがって、説明してゆきます。 まず、C5を追加するために、信号ラインとL1とを分断します。下図のように、カッターナイフ等を使って、ランド間のパターンに対して直角(写真で水平方向)に2本の切込みを入れます。 (1)切断部分に2本の切込みを入れる 次に、切り込みを入れた部分のパターンを切除します。下図のように、ナイフを横にして軽く彫るように削り取ります。彫刻刀で削り取る要領と同じです。ナイフに慣れていない方は、彫刻刀を使った方が安全に作業が出来るかもしれません。この部分は、慣れていないと怪我をしやすい作業なので、十分に注意して作業を行ってください。 (2)切込みを入れた部分のパターンを切除する (3)基板の修正の完了(切除後の写真) 以上で、基板の改造は完了ですので、本書にしたがって、部品を取り付けてゆきます。ただし、同軸ケーブルを取り付ける前に、追加するコンデンサC5(100pF)を取り付けます。 予め、コンデンサのリードを数mmまで短くカットしておき、パターンを切除した部分にあるランドにハンダ付けします。コイルL1や別のコンデンサC1が取り付けられているので、取り付け部分のハンダを少しだけ吸い取ってから作業を行います。コンデンサC5をピンセットで保持したまま、ランドに残っているハンダで仮固定し、2本のリードの仮固定が終わってから、ハンダを足せば綺麗に仕上がります。 (4)追加のコンデンサをハンダ付けする (5)横から見た写真 最後に同軸のアンテナケーブルをハンダ付けし、コンデンサの高さが邪魔な場合は、下図のように折り曲げます。 (6)アンテナケーブルをハンダ付けする 以上で製作は完了ですが、追加したコンデンサのリードの長さによって、コイルL1+コンデンサC5を合わせたインダクタンスが、若干、増加してしまうことがあります。増加分は、コイルを作り直すほどは大きくありませんので、コイルL1の片端のループを、外側に折り曲げることで調整が出来ます。片端で足りなければ、両端を外側に折り曲げます。 下図に改良前後の特性例を示します。およそ2倍の出力電圧が得られるようになりました。 改良したディテクタの入出力特性の一例 なお、特性は製作したディテクターで測定を行った一例です。本書の図面や内容に沿って製作いただくことで、なるべく製作のバラツキが生じないようにしていますが、部品や製作のバラツキによって必ずしも特性が一致するとは限りません。 また、C1を変更しなかった場合であっても、調整無しで1.5〜1.8倍前後の出力が得られることを確認しています。 |
製作したパワーディテクターは小型のデジタルマルチメーター(デジタルテスター)に接続することで持ち運びが容易になります。しかし、電圧をデジタル表示されたものでは、直感的に強度が分かりにくい欠点があります。そこで、100円ショップなどで売られているバッテリーチェッカーから取り出したアナログメーターを使って、携帯型UHFチェッカーの試作を行ってみましたので紹介いたします。 パワーディテクターのインピーダンスが高く、また、出力電圧が低いので、パワーディテクターとアナログメーターの間にオペアンプを挿入します。下図は挿入するオペアンプの回路例です。電池をオペアンプの電圧入力に接続しますが、ディテクタのGNDは電池電圧の中心値(4.5V)に接続しています。また、メーター出力への極性が反転する点にも注意が必要です。
下図の例2は4回路入りのオペアンプを使用した場合の回路図です。電池はオペアンプの電圧入力に接続し、ディテクタのGNDは電池電圧の中心値(4.5V)に接続します。また、この例2ではメーターへの出力前に電圧を反転しているので、例1とは異なる正極性で出力されますのでメーターの極性を反転する必要がありません。
この回路図をブレッドボード上で製作した例を下図に示します。 チェッカー用アンプの製作例 これらをユニバーサル基板で作成し、ケースなどに入れれば完成です。なお、ディテクター部のようなUHF周波数を使った部分は、ブレッドボード上で製作しても正しく動作しません。UHF周波数ではブレッドボード内の配線の影響が生じるからです。したがって、ディテクタ回路部は本誌の付録基板を使用してください。 また、今回使用したメーターは最大1mAのタイプでしたので、メーターの直前の可変抵抗の値は保護用の固定抵抗と合わせて3kΩ前後に調整しています。最大の入力時にメーターの針が最大を示すように調整するか、メーターの感度やオペアンプの最大出力振幅から適切な抵抗値を求めて設定します。 |
以下にCQ出版社「地デジTV用プリアンプの実験」の目次を示します。書籍の方には節番号が付与されていません。Linkは補足的な情報を当サイト内で補っている箇所です。
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