ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ対策編

分配器(スプリッター)

作成:2003年11月

MASPRO製 分配器 2SPF

分配器とは(スプリッター、ディバイダー)

 分配器は同軸線(アンテナケーブル)を複数の同軸線に分けるためのアンテナ部品です。
 電力も分配数の分だけ除算され、2分配なら電力が半分になります。デシベルdBで表すと3dBに相当します。回路やコネクタ等の損失も加わるので、一般的な2分配器には4dB程度の損失があります。

2分配器

 3dBの損失といってもピンと来ないかもしれません。もし3dBの損失を改善することが出来れば、ブロックノイズが発生していたり不安定な受信だったのが、安定して受信できるようになる程度の効果のある改善レベルです。もちろん、状況によって効果の度合いは異なります。

つまり、分配器や分配数は「なるべく少なくする」ことが重要です。

 このページが分配器の説明ページにも関わらず、最初に損失の話を書いたのは、分配器の誤った使い方で失敗を引き起こすことが多いからです。
 例えば、新たに分配器を購入する際に将来の機器の増加に備えて分配数の多い分配器を検討される方もいらっしゃると思います。受信強度が十分に高い場合やブースターが用いられている場合などは、それでも良いかもしれませんが、空き端子に取り付けなければならないダミー抵抗を忘れがちです。
 また、レコーダーのチューナー部に分配器が内蔵されている場合も多く、レコーダー内蔵の分配器を積極的に使用することで分配器による損失を減らせる場合があります。
 下図は、レコーダ(機器1〜3)内の無損失分配器を使用した場合の損失改善効果の一例です。


2分配器


 この例では分配器で8dBの損失が発生していたのを、ほぼ無損失に改善されました。しかも、外付け部品が不要です。機器が増えたときも対応(※)できます。本ページ内の「レコーダ内蔵の分配器の特性」も参照してみてください。
 なお、レコーダ内蔵の分配器が必ずしも無損失であるとは限りません。

 低ノイズアンプを内蔵した分配損失補正回路内蔵の分配器も市販されています。当ページ内の「市販品」表の「特長」に「無損失」と書かれた八木アンテナ製CS4DBTが無損失分配器です。
 通常の4分配器だと8〜10dB程度の損失がありますが、分配前に増幅することで、損失を補正しています。但し、LNAは利得が低いブースターと同じです。ブースターを挿入した時と同様の問題が発生する場合もあります。詳しくは「対策編-ブースタの効果」及び「対策編-相互変調」を御覧ください。


分配器と分波器の違い

 分配器は、電力を分配するものでした。分配器に対して、分波器は、周波数の違うものを分ける働きをします。例えばVHF/UHFの分波器は、VHFとUHFの混合された信号をフィルタで分けてから出力します。同じ周波数の電波を分けるのではないので、原理的には、分配器のように電力損失がありません。(ただし、実際はフィルタの特性によって、多少の損失があります。)

分配器と分波器との違い
部品 作用 電力
等分
帯域
分割
主な用途
分配器 電力を等分に分配する 複数の機器へ分割
分波器 周波数に応じて電波を分波する 地上波とBSを分割

分配器と混合器の違い

 混合器は複数のアンテナからのケーブルを、1本に集約するときに使用します。分配器と混合器は基本的に同じ原理ですが、混合器には分波器と同じように周波数によって混合するものが含まれています。また、不要な周波数を抑制するフィルタが内蔵されていることもあります。言葉としては、分配に対して混合の印象を受けますが、実際には分波に対する混合のような役割です。
 さらに、混合器はアンテナに近い屋外で使用することが多いので、防滴タイプや防水タイプである必要もあります。

分配器と分波器と混合器の違い
部品 作用 電力
等分
帯域
分割
主な用途
分配器 電力を等分に分配する 複数の機器へ分割
混合器 製品によって異なる アンテナを混合

 混合器を分配器や分波器として使用したり、分配器や分波器を混合器として使用することも出来ます。ただし、フィルタや分波・混合などの周波数や、防水・防滴機能、後述の通電仕様についても確認しておく必要があります。

分配器と分岐器(直列ユニット)の違い

 分配器は電力を等分に分配する部品でした。分岐器は電力の一部を取り出す部品です。詳しくは「対策編-
分岐器」を参照ください。

分配器と分岐器(直列ユニット)の違い
部品 作用 損失 主な接続形態
分配器 電力を等分に分配する 3〜4dB スター型(根元で分配)
分岐器 電力の一部を取り出す 約10dB バス型(配線途中で分岐)

通電仕様

 ここで言う「通電」とは、DC通電のことで、同軸ケーブルに直流電流を流すことを言います。1通電型の分配器では、下図のようにDC通電が一端子のみとなっています。もちろん、電波は両方の端子に分配されます。

DC通電

 主に、ブースター用の電源やBSアンテナ用の電源の供給や、アンテナ切換などで使用されます。電圧はDC5V〜DC20Vの範囲ですが、一般的には、以下の電圧が使われています。

アンテナDC(直流)電圧
電圧\用途 電源のみ 直線編波 円偏波
ブースタ スカパー 110度CS
DC15V ○通常 水平偏波 右施円偏波
DC11V - 垂直偏波 左施円偏波

 BSアンテナ用の電源とは、アンテナの先端のLNBと呼ばれる受信回路を動かす為の電源です。ブースターもしくは、BSチューナーのアンテナ入力端子から出力する必要があります。

全通電型の分配器

 分配器の通電方法には、1通電型と全通電型といった複数の種類があります。1通電型は、前述のとおりですが、これを全通電型に置き換える場合、機器によっては問題が発生する場合があります。必ず、取扱説明書を確認の上、全通電型の分配器での接続に問題が無いかを確認してください。

 全通電型は、分配器の全ての端子にDC通電がある分配器です。もし、2つのチューナーの両方のBSアンテナ電源がオンしてしまった場合、BSアンテナ電源同士が衝突してしまいます。実際には、チューナに保護回路が入っていたり、「BS電源がショートしました」などのメッセージとともに保護される機種もありますが、このような危険な配線は避ける必要があります。

 例えば、アンテナの混合には全通電型を使います。複数のUHFアンテナに1台の電源で供給する場合は、全通電の分配/混合器である必要があります。

全通電型分配器


ダミー抵抗器、終端抵抗器(終端器、ダミーロード抵抗器、ターミネーター、擬似負荷)

 分配器の空き端子にはダミー抵抗器を取り付ける必要があります。これは、分配器での電波の反射を防止するもので、下図のように抵抗で終端されています。但し、チューナー機器内蔵の分配器については、通常は不要です。取扱説明書にしたがってください。

ダミー抵抗器(終端抵抗器)

ダミー抵抗器、終端抵抗器(市販品)の一例
防水 メーカー 型番 個数 (参考)
日本アンテナ DF-75C-SP 1個 ¥900
DXアンテナ DFD-75S-B2 1個 ¥699
MASPRO DR7F-P 1個 ¥532
日本アンテナ DF-75C5-HD 5個 ¥2,680

分配器の設計

 最も、簡単な分配器の設計方法は、配線を単純に分岐して、それぞれを75Ωに変換するようにします。
 75Ωの同軸線を2つに分けると、1つあたり150Ωになります。そこで、下図のように、150Ωのインピーダンスを75Ωに整合する為のL(コイル)C(コンデンサ)を入れます。

分配器の設計

           HPF型の分配器 L3= 22nH, C1=C2= 4pF

分配器の設計

           LPF型の分配器 C3= 4pF, L1=L2= 22nH

 しかし、この分配/混合器の問題点は、周波数に依存してしまうことと、出力側のインピーダンスが75Ωにならない欠点があります。
 地上デジタル放送で使用する周波数であれば大きな支障なく使えますが、VHF帯やBS、CSと広い周波数帯域で使用する場合は注意が必要です。
 HPF(ハイ・パス・フィルタ)型はVHF(1〜12ch)に大きな劣化があり、LPF(ロー・パス・フィルタ)型では、BSやCSで大きな劣化があります。したがって、HPF型をVHFで使用したり、LPF型をBSで使用したりすることは出来ません。
 インピーダンスの問題要因は、分岐点に注目すれば分かります。75Ωを2本に分けて150Ωにしていますので、分岐された150Ω側から見た時に、75Ωと150Ωの合成(約50Ω)が見えてしまいます。

抵抗分配器の設計

 抵抗を使ってインピーダンスを調整した分配器が下図です。通常の分配器の損失は電力を半分にする点から3dBですが、この分配器は抵抗で電力を消費してしまい、電力が、さらに半分になり、6dBの損失があります。
 長所としては、周波数に依存しない点、インピーダンスが正確な点、製作が容易な点です。損失を気にしない部分(ブースタの後ろなど)やBS・CS用のケーブル分配に、利用することがあります。但し、この回路では直流電流を通すことが出来ないので、ブースター用の電源を供給したり、BSコンバータ用電源を通すことはできません。

抵抗分配器の設計

ウィルキンソン分配器の設計

 インピーダンスの問題を解決した分配器の一つに、ウィルキンソン型分配器(Wilkinson Divider)があります。
 この分配器の特徴は、75Ωを分割した150Ωをλ/4位相器によるインピーダンス変換で、75Ωに戻しています。
 ウィルキンソン型では、線路の分岐点に特徴があります。分岐点から、L1へ向かう電力はRとL2を経由して分岐点に戻ろうとしますが、この経路の長さが、ちょうどλ/2になるので打ち消しあう位相になります。
 つまり、L1とL2のそれぞれに分岐された信号は、お互いに、分岐点に戻ってこないため、分岐点でのインピーダンスが維持されるのです。
 ただし、LとCで構成された位相器に誤差が生じると、抵抗Rで電力を消費してしまいますので、製作に精度や設計要素が要求されます。

ウィルキンソンディバイダー

      C3=6pF L1=33nH L2=33nH C1=3pF C2=3pF R=150Ω

 この回路はLPF型になっているため、BSなどの高い周波数には向きません。
 λ/4位相器をマイクロストリップラインで製作する方法もあります。この場合、LやCの代わりに特性インピーダンスsqrt(Z1*Z2)のλ/4波長線路に置き換えます。

自作分配器の製作例

 以上の分配器から、部品点数や調整が少なく、かつ、地デジ用分配器として作用するように考慮した自作の分配器を設計しました。以下に写真と回路図を示します。詳しくは、「設計編-
アンテナ部品」を参照ください。

自作分配器

自作分配器の回路図

         自作分配器 L3= 22nH, C1=C2= 4pF, R=150Ω

市販の分配器の設計

 下図は市販の分配器の回路です。75Ωの入力をトランス(TRANS)でインピーダンス変換してから分割(DIV)することで75Ωの信号を出力しているようです。
 仮にN=0.7とすると、Zc=37ΩとなりC3とL1なしで出力1と2の75ΩがZcで整合します。しかし、この時に出力側から見たインピーダンスは37Ωと75Ωの合成である25Ωが見えてしまい反射が発生します。これを緩和するように、Zc、L1、L2、C3が決められているものと思います。



         トランス     分┏━━┓   ━┳━━━
         1:N     配┃ ┌╂┨┠──┨出力1
━━━┳━   ┏━━━┓     ┃L1∫┃ DC  ┯┻━━━
入力 ┠──┨┠╂┐‖┌╂──●──╂─塘ォ  ┯┿┯   
━━━┻┯  DC ┃∫‖∫┃Zc |  ┃L2∫┃   ━┳━━━
    |   ┃∫‖∫┃  ┷  ┃ └╂┨┠──┨出力2
    |   ┃∫‖∫┃  ┯  ┗━━┛ DC  ┯┻━━━
    |   ┗━┯━┛  |C3        |    
┯┯┯┯┿┯┯┯┯┯┿┯┯┯┯┿┯┯┯┯┯┯┯┯┯┿┯┯┯┯
   L1=L2=○○nH、C3=○○pF、N=sqrt(Zc/75)、DC=100pF

市販の分配器の特性

 下図は市販の分配器の特性です。低価格品(仕様:40〜1335MHz)では1500MHzあたりから減衰が激しくなってゆきますが、金属ケース品は 2150MHzまでほぼ平坦で良好な特性が得られていました。

市販の分配器の特性(BS対応低価格品)

市販の分配器の特性(金属ケース入り)
市販の分配器の特性

                          測定器:GigaSt Ver5

レコーダ内蔵の分配器の特性

 下図はレコーダーに内蔵されている地上デジタル入力部の分配器の特性です。
 地上デジタル用の端子なので、レコーダの出力端子からBS機器に接続することは想定されていませんが、BS周波数までは良好です。但し、機種によってはBS周波数に対応していない場合がありますので、地上デジタル用出力端子からBS入力に接続することはお奨めできません。

レコーダ内蔵の分配器の特性(地上デジタル)
レコーダ内蔵の分配器の特性(地上デジタル)

 下図は衛星デジタル側です。BS周波数では、増幅されていることが分かります。しかし、地上デジタルのUHFは減衰しています。

レコーダ内蔵の分配器の特性(衛星デジタル)
レコーダ内蔵の分配器の特性(衛星デジタル)


 このような無損失分配器がレコーダーに内蔵されているかどうかはカタログや説明書に記載されていません。SHARPやPanasonicについては、これまでのデジタル放送対応の機種(DV-HRD20、DMR-EX100)に内蔵されているので、今後も内蔵される可能性が高いと思います。
 一方、CATV等の強入力耐性を上げるためか損失のある分配器を使用している機種もあります。(一例:SONY RDZ-D50)

市販の分配器


分配器(市販品)一例
種別 分配数 コネクタ 特長 メーカー 型番 (参考)
屋内用 2分配 F型接栓 推奨品[DH] MASPRO 2SPFA ¥1,555
屋内用 2分配 ワンタッチ 低価格 日本アンテナ FPD-772-SP ¥700
屋内用 2分配 ワンタッチ ケーブル付 日本アンテナ FP2-200-SP ¥930
屋内用 3分配 F型接栓 推奨品[DH] DXアンテナ 3DE1 ¥1,079
屋内用 4分配 F型接栓 無損失 八木アンテナ CS4DBT ¥8,950
[DH]はJEITA推奨品

分岐器(直列ユニット、方向性結合器、ディレクショナルカプラ)

 分岐器、直列ユニット、方向性結合器の情報は「対策編-
分岐器」を参照してください。

トランス方向性結合器の製作例(基板表面)
方向性結合器の製作例
方向性結合器の製作例

関連ページ


設計編 - 自作アンテナ部品
  アンテナ部品の設計方法

設計編 - 自作ブースター
  自作ラインブースターの製作方法

対策編 - 分波器(セパレータ)
  分波器の働き 接続方法 設計方法

対策編 - 分岐器(直列ユニット)
  分岐器の働き 接続方法 設計方法

対策編 - 混合器(ミキサー)
  混合器の問題 フィルタでの対策方法

基礎編 - フィルター
  ハイパスHPF,ローパスLPF,BEF,BPF

設計編 - 自作アンテナ
  八木アンテナ概略 アンテナ設計手順


地デジTOPへ戻る