ボクにもわかる地上デジタル - 地デジ基礎編

電界強度の変換

作成:2004年04月
更新:2005年09月
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アンテナ実効長

 空間に電位差を生じさせることで、電圧に比例した電界が放射されます。この時、アンテナの軸に直角な方向に放射される電界強度[V/m]は以下のようになり、電圧Ve[V]に対する電解の比例定数をアンテナ実効長le[m]と呼んでいます。

  (電界強度)E=(印加電圧)Ve/(実効長)le

  ダイポールアンテナの実効長 le=λ/π

 一方、開放端電圧Veと負荷端電圧Vtの関係(こちら)、及び、電力がV^2/Rで表せることから以下のようになります。

  有効電力P
  = Vt^2/R
  = Ve^2/4R
  = (Ele)^2/4R

電界強度から電圧への変換(1) dBuV/m→開放端dBuV

 電界強度と開放端電圧の関係式より、

  0dBuV/m
  → 20*log(le) dBuV
  = 20*log( 300/FREQ/PI() ) dBuV
  (FREQ=周波数[MHz])

 FREQ=500MHzの時、

  0dBuV/m
  → 20*LOG( 300/500/PI() )
  = -14.4 dBuV

電界強度から電圧への変換(2) dBuV/m→負荷端dBuV


 FREQ=500MHzの時、

  0dBuV/m
  → 20*LOG( 300/500/PI()/2 )
  = -20.4 dBuV


電界強度から電力への変換 dBuV/m→dBm

 ダイポールアンテナで受けた場合のアンテナインピーダンスは、73.13Ωです。ここで有効電力Pの式より、

  0dBuV/m
  → 10*log((Ele)^2/4R*1000) [dBm]
  = 20*log( 300/FREQ/PI() ) - 10*log(4*73.13) -90[dBm]

  (FREQ=周波数[MHz])

 FREQ=500MHzの時、

  0dBuV/m
  → 20*LOG( 300/500/PI() ) - 10*LOG(4*73.13) -90
  = -129.0 dBm

となります。
 インピーダンス変換で電圧は変化しますが電力は変化しないので、73Ωでも75Ωでも50Ωでも値は変化しません。

変換表

 以上の計算式を基に、使いやすい変換表を作成しました。

電界強度から電圧、電力への変換表
ダイポールアンテナ(2.14dBi)で受信した場合
電界強度 dBuV/m 0.0 20.4 14.4 129.0
負荷端電圧 dBuV -20.4 0.0 -6.0 108.6
開放端電圧 dBuV -14.4 6.0 0.0 114.7
電力 dBm -129.0 -108.6 -114.7 0.0
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計算表
電界強度 dBuV/m
負荷端電圧 dBuV
開放端電圧 dBuV
電力 dBm
条件:FREQ=MHz Gain=dBi
                            無断コピー禁止

微弱電波(微弱無線によるワンセグ再送信アンテナ)

 室内などの地上デジタル放送の電波が届かない場所で、ワンセグ等の受信を行いたい場合に、壁面のテレビコンセントにアンテナを接続して、受信する方法があります。しかし、この場合のアンテナは送信アンテナとして作用してしまいますので、微弱な電波でなければなりません(電波法違反になる)。
 送信アンテナからの出力が微弱な場合は、微弱無線局として「免許無しに」電波を出力することが出来、そのレベルは送信アンテナから3mの距離で、35μV/mと定められています。ここで、微弱電波をダイポールアンテナで受信した場合の電力変換を行うと、以下のようになります。

  微弱無線局の電界強度
  = 35μV/m (規制値)

  微弱無線局の電力許容値
  = 20*log(35)−129−6−5-10*log(13/6)
  = −112.5dBm (換算した上限値)

  -129:電界強度→電力、-6:尖頭値→平均値、-5:1MHz測定時の補正値(規則)、13/6:1MHzあたりのセグメント数

 残念ながら、送信アンテナから3m離れた場所での電波強度−112.5dBmでは、ワンセグ受信機であっても受信できない微弱な電力です。とはいえ、ワンセグ受信機を送信アンテナに近づけると受信する電波強度を高めることが出来ます。
 たとえば、1mの距離であれば、受信強度は−103dBmとなるので、ワンセグ受信機のアンテナを伸ばした状態であれば受信が可能になります。(機種にもよります。)
 したがって、テレビコンセントと送信アンテナの間にアッテネーターを挿入して、受信距離が1mを超えないように調整することで、微弱な電波を送信することが出来るようになります。

┏━━━━━━━━┓ ┏━━━━━━┓ ▽・‥…‥・▽┏━━━━┓
┃テレビコンセント┠─┨アッテネータ┠─┘ 1m以内 └┨ワンセグ┃
┗━━━━━━━━┛ ┗━━━━━━┛送信      ┗━━━━┛
                  アンテナ

 送信出力を測定できる場合は、−80dBm以下の出力であれば、送信することが出来ます。(送信アンテナ、受信アンテナともにダイポールアンテナを使用し、これら の距離を3mとすると、電波損失は33.3dBとなります。)

  微弱無線局の出力許容値
  = −112.5dBm+33.3dB (470MHz)   ≒ −80dBm

 送信アンテナを接続する前に、
UHFチェッカーを使って、送信出力を確認しておきます。テレビコンセントから7波が出力されている場合の規制値は、以下のとおり、ボリューム(感度)を最大にした状態でLED点灯が3個以下でなければなりません。

  チェッカ7波入力時電圧
  = -80+10*log(7×13)+108.6
  ≒ 49 dBuV

  3点灯以下(VOL=最大時)に相当

御注意
 全放送チャンネルが1mの距離で受信できないようにアッテネーターを調整してください。また、アンテナの向き、受信機の位置等によっては、例え、1m以下で受信できなかったとしても、電力許容値を超過している場合があります。例えば、80cmや60cm程度の距離にした方が安全です。特に、USBタイプのワンセグチューナーの場合は、30cmの距離で受信できないように調整してください。

 ※ 上記情報は、電波法を十分に理解の上、自己責任で御利用ください。
 ※ 電波を送信する機器は無線局であり、電波法の規制を受けます。
 ※ 調整等を誤ると、周囲に迷惑をかけるだけでなく、違法行為となり、
   1年以下の懲役、または、100万円以下の罰金の対象となります。
 ※ 掲載情報に誤りがあったとしても、当方は何ら責任を負いません。

 室内ブースターや、屋根の上にブースターが設置されている場合、マンションなどの共同受信設備や、CATVなどの場合は、電波法の規制を受けるので、アッテネーターによる調整が必要です。しかし、何処にもブースターが設置されていない場合は、電波法の規制を受けないと解釈しています。

電波法などの規制

 前述のとおり、微弱無線局は3mの離距離における電波強度が35μV/m未満と定められています。デシベルに変換すると約30.88dBμV/mです。
 一方、国際規格CISPRや一般財団法人VCCI協会が定めるコンピュータ機器等が放射する妨害電波の強度は、上記と比較して緩く設定されています。
 例えばオフィス用の機器であれば1GHz〜3GHzについては最大76dBμV/mまで認められており、連続でも56dBμV/mの妨害波の放射を許容しています。

       56dBμV/m
      ┏━━━━┓
      ┃電子機器┃
 31dBμV/m ┃放射強度┃
┏━━━━┓┃(OA機器)┃
┃微弱電波┃┃    ┃
┃    ┃┃    ┃
┃    ┃┃    ┃

 これは、無線機器を取り扱う際の重要なポイントです。パソコンは56dBμV/mの妨害電波の放射しても良いのに、無線機は31dBμV/mまでしか許容されておらず、しかも違反された場合は懲役刑が課せられるという非常に厳しくなっているのです。
 一見、矛盾した規制のようにも感じられますが、無線機は電波を利用するために電波の放射を目的としている機器であるのに対し、コンピュータ機器は意図せずに電磁波が漏れているという、考え方に違いがあります。もしコンピュータ機器の規制を無線機と同レベルにしてしまうと、こういった機器の商用化が技術やコスト的に困難になり、かえって著しく社会へ悪影響をもたらしてしまいます。
 将来的には電波と同レベルの規制にすべきでしょうが、これも一つの電波の共用利用のあり方です。もちろんコンピュータ機器が許容されているからと言って自ら電波を利用する機器が本来あるべき規制値を緩和するということにはなりません。

 ところでコンピュータ機器であっても、WiFiのような電波を送信する機能が含まれる場合は、無線機としての規制値を受けます。多くの場合は、無線機をミニPCIボード等のモジュールとして規制を満足させ、それをコンピュータ機器に組み込むことで、コンピュータ全体としては無線機としての規制から逃れることが出来ます。
 ところが、コンピュータが妨害波を発すると、無線モジュールの通信性能が低下してしまいます。Wi-Fi性能を発揮させるためには、妨害電波を低減させることが必要になるのです。
 このあたりの対策状況は、製造メーカーによって大きく異なります。価格だけを追求するメーカーと、品質や性能を重視するメーカーとの間で、内部の電磁波対策が大きく異なり、価格差が埋まらない一つの要因なのかもしれません。

関連ページ

基礎編 - デシベル
     デシベル[dB] 電力[dBm]

基礎編 - デシベルの変換
     開放端電圧 dBμV→dBm

基礎編 - 公式と定数
     光速 透磁率 誘電率 VSWR 反射係数


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