目次
概要
アナログ独特の音色が楽しめる ION AUDIO Vinyl Transport は、多くの比較ランキングで上位となっている人気商品です。しかし、本来のレコードや通常のデジタルオーディオ機器にに比べると、音質が劣っています。そこで、本稿では高級オーディオ機器並みの高音質化にチャレンジしてみます。
改善方法
本ブログでは、以下の改善方法について説明します。
- スピーカーの交換
- RIAA フォノイコライザーの追加
- アンプの交換
- レコード針とカートリッジの交換
スピーカーの交換
もっとも手軽なグレードアップ方法は、スピーカーの交換です。本体を分解し、内部のスピーカーを取り外し、新しいスピーカーに入れ替えます。ただし、スピーカーのコードは内部で半田付けされているので、半田付け作業が必要です。

ION AUDIO Vinyl Transport に内臓されているスピーカーは直径28mmの小型品です。数のようなスピーカーユニットが、左右に2個、入っています。

付属スピーカは4Ω2Wです。4Ω~8Ω、2W~4W程度のものの中から、4cm程度のものを選定すると良いでしょう。振動版の面積は2倍になるので、純正品よりも低音が出るようになります。
下図は4cmスピーカーの組み込み例です。ユニットそのものは1cmほどしか増えないので、工夫すれば組み込めるでしょう。スピーカーの振動版の背面の音漏れを防ぐために、ユニットのフレームをボンドなどで隙間なく固定します。

フォノイコライザーの追加
スピーカーを交換しても、まだ低音に物足りなさを感じると思います。ION AUDIO Vinyl Transport には、RIAA フォノイコライザーが搭載されていないからです。試しにRCAジャック(本機の背面のオーディオ出力)をオーディオ機器に接続してみると、低音が出ていないことが確認できるでしょう。
筆者は下記のブログで紹介した、RIAA フォノイコライザーを追加しました。
カートリッジからの信号線を、下図の左側のフォノイコライザーに入力し、フォノイコライザーの出力を本機背面のRCAオーディオ出力端子に接続しました。

アンプの交換
ION AUDIO Vinyl Transport には、オーディオ用パワーアンプとして LM4863 の互換品が搭載されています。LM4863 は古くから小型スピーカーを高音質に駆動する定番のアナログ・アンプです。アナログ感は味わえるものの、D級アンプと比べると、繊細さに欠けます。そこで、PAM8403 というD級アンプに交換してみました。

PAM8403 の音質については、下記を参照してください。
秋月で売られているD級オーディオアンプ3種類を簡易測定で比較してみた-PAM8403 (bokunimo.net)
秋月で売られている高音質D級オーディオ・アンプ4種類をコンポ用スピーカに接続して、比較してみた-PAM8012、PAM8403 (bokunimo.net)
交換といってもピン配列や周辺回路が異なるので、PAM8403 搭載のアンプ基板を追加し、LM4863 への配線を PAM8403 に向けます。また、下図のようにLM4863 は取り外しました。ミュート信号(下図の黄色の信号線)を分圧して5Vにしてから PAM8403 のSHUTDOWN端子に接続しました。

レコード針とカートリッジの交換
これまでの改造は序章にすぎません。最も高音質化に貢献するのが、レコード針とカートリッジです。下図は今回の改造のメインとなるカートリッジ部です。

ION AUDIO Vinyl Transport には、CHUDEN CZ-800 の互換品が搭載されていますが、 CZ-800 はサファイヤを使ったセラミック駆動方式です。今回は、audio-technica 製 AT3600L (交換針はATN3600L)に変更してみました。

すでに交換針 ATN3600L の生産を終了していますが、後継品 ATN3600LE や互換品が売られており、近年、ダイヤモンド針としては最も多く利用されていると思います。

しかし、カートリッジの質量が約2g増え、針圧が約8gになります。そこで、トーンアームの後方に重り(ウェイト)を追加して加重します。目標針圧は約4gです。
下図のように可動部の邪魔にならないスペースに金属を埋めてゆきます。筆者は鉛板を使用しました。鉛には毒性があるので、取り扱いには十分に注意してください。また、不正に廃棄すると土壌が汚染され、それが飲料水や食品に交じり、やがて自分の口の中に戻ってきます。

外側にも金属を追加し、直接、手が金属に触れないよう、ポリイミドテープで保護しました。

ケースの蓋を閉じても再生できるギリギリまで加重しましたが、目標針圧4gには達しませんでした。とはいえ、約3.6gの減量に成功し、針圧は約4.4g程度になりました。

最後に
本記事は知人が改造したレコードプレーヤーを借用して、追加改造して記事にしたものです。アンプ部やスピーカ部は主に知人による改造です。フォノイコライザーとカートリッジは知人からの要望で当方が実施した改造です。
by bokunimo.net