目次
調整の前の注意点
調整方法そのものはヘッド部のネジを回すだけです。しかし、かえって悪化することもあるので、事前に本ブログの調整方法を読んでから始めると良いでしょう。
調整に必要な機材
ボクが調整に使用した機材です。代替手段もあるので、保有していないからといって、あきらめたり、あわてて購入する必要はありません。本ブログを読んでから自分に必要な機材を準備してください。
- 調整対象のカセットテープ・デッキ
- アジマス調整用テープ作成用カセットテープ・デッキ
- 正弦波(10kHz)発生器
- カセットテープ(ノーマル・タイプで良い)
- ドライバー(調整ネジに合うもの)
- 消磁器
- オシロスコープ(2ch以上)
- RCAピン・プラグ×2
録再ヘッドのアジマス調整方法
あらかじめ約10kHzの正弦波信号をカセットテープに録音(モノラル)し、アジマス調整用テープを作成しておきます。アジマス調整用テープをステレオ再生し、左右の音声信号が最大振幅(音量)となるように調整します。
1.アジマス調整用テープを作成する
あらかじめ新品のカセットテープ・デッキなど、録再ヘッドのアジマスがずれていないデッキを使用し、信号発生器を使って10kHzの正弦波をモノラル録音しておきます。パソコンなどで10kHzの正弦波を出力する方法もあります。
2.カセットテープ・デッキをオシロスコープに接続する
RCAピン・プラグにオシロスコープ用プローブを接続したものを準備し、オシロスコープとカセットテープ・デッキを接続します。同じものを2つ準備して、デッキの左出力と右出力をオシロスコープのch1とch2に接続して下さい。
3.ドライバー(工具)を消磁する
デッキの録再ヘッド部に接近させる工具を、消磁しておきます。消磁器をONにした状態で、ドライバーの金属部を消磁器にこすりつけ(5往復程度)、ONのまま、ゆっくり(10秒以上)と消磁器から遠ざけます。30cm以上、離したら消磁の完了です。
なお、帯磁したドライバーで調整しようとしても振幅が安定しません。また、アジマス調整用テープの記録信号も劣化してしまいますので、必ず消磁した工具を使用してください。
4.オシロスコープ(またはレベルメータ)を見ながらアジマス調整を行う
作成したアジマス調整用テープを再生しながら、アジマス調整用のネジを左右に回転させてみます。たいていのカセットテープ・デッキの場合、±90度以内で最大振幅(最大レベル)が得られると思います。オートリバース機の場合は調整用ネジが2つあり、片方がカセットテープのA面用、もう片方がB面用です。両方のネジを調整してください。
初めて調整するときは、初期位置を油性ペンでマーキングしておくと良いでしょう。
ネジを固定するための接着剤がはがれるので、一度、調整すると、頻繁に再調整が必要になります。ネジロック用の接着剤で固定する方法もありますが、接着剤が内部に侵入すると故障の原因になるので、十分に注意してください(接着剤が気化するときに内部に侵入してしまうこともあるので、揮発しやすい接着剤の使用は、お奨めしません)。
5.可能であれば位相を合わせる
より正確に調整するには、最大振幅かつ位相が合うように調整します。下図の左側は調整前の位相です。振幅は十分にありますが、およそ180度の位相差がありました。ネジを少しずつ動かし、位相差を低減させたのが右図です。
10kHzでの位相差は1kHzでは1/10しかありません。このため、上図の左側のように180度のずれがあったとしても、演奏者の位置が違って聞こえることはありません。オシロスコープをお持ちでない場合は、レベルメータなどで最大レベルが得られるように調整しても良いでしょう。
とはいえ、位相調整すると、より明確に演奏者の位置を把握できるようになります。例えば、複数の演奏者のそれぞれの位置関係まで明瞭になるので、演奏者の多い楽曲では重要な調整です。
6.カセットテープ・デッキの録再ヘッドの消磁を行う
アジマス調整用に消磁したドライバー(工具)を使っても、録再ヘッドに磁力が帯磁している可能性があります。
そこで、不要なカセットテープを入れ、5分ほど正弦波または無音を録音して、消磁します。
可能であればメタル・ポジションのテープを使用してください。ポジションが手動切替の場合は、ノーマル・ポジションのテープを入れて、メタル・ポジションに設定しても良いでしょう。
調整結果の一例
手順の部分に掲載したオシロスコープの画面は、A面側の調整の様子でしたので、B面の調整の様子について下図に示します(こちらの方が、効果が大きい)。

左図は調整前です。こちらも140度くらいの位相差がありました。調整後の右図では位相が合い、振幅も20~30%ほど増大しました。
調整の効果
今回、オンキョーのINTEC 205シリーズのカセットテープ・デッキ K-505(安価な大量生産モデル)で実施してみました。
ボクが感じた効果は期待以上で、「安価なテープ・レコーダで、こんなに良い音が出ていたんだ」と驚きました。新たに録音したカセットテープは、大げさにはCDと聞き違えるほどの音質が得られるようになりました。
より大きく改善できたのは、20年以上前の古いカセットテープの再生です。高音が鳴らなくなってしまったと思っていたのが、くっきりと蘇りました。
ご注意
通常は、ヘッドのアジマスがずれることは少ないので、音質を格段に改善するだけの効果は出ません。長期にわたって使用しており、ヘッドの汚れなどを落としても、音質に不安がある場合は、前記のような効果が出る可能性があります。
ネジを固定していた接着剤が剥がれるので、調整後は、ずれやすくなります。
ネジを180度以上、回転させてしまうと、もとのネジ位置に戻せなくなる場合があります。±90度を超えて調整が必要な場合は、ネジの脱落や構造部の変形などに十分に注意してください。
本ブログでは、一般的な2ヘッド機(オートリバース機)について説明しています。3ヘッド機の場合、より簡単にアジマス調節できる機種もある一方、より複雑な調整(録音ヘッドのアジマス調整、ヘッドの高さ調整など)が必要になる機種も多くあります。また、3ヘッド機の消磁についても、(録再ヘッド一体型の3ヘッド機を除き)テープ・レコーダ用の消磁器が必要です。
by bokunimo.net
「カセットテープ・レコーダのアジマス調整方法」への1件の返信
アジマス調整用テープの代わりに、カセットアダプタを使ってみましたが、調整しづらいことが分かり、当該方法についての説明を削除しました。