カテゴリー
オーディオ

M5Stack 製 M5StickC で作るレコード 回転数 RPM 計

M5Stack Technology 社製のフィンガー・サイズのコンピュータ M5Stcick C を使って、レコード用RPM計を製作してみました

回転数 RPM 計 + 水平器

回転数 RPM 計と水平器(水平計)を使った簡易測定

本ブログでは、回転数 RPM、ワウフラッタ、水平度を簡易的に測定する方法について説明します。

RPM、ワウフラッタ、水平度

レコードプレーヤーは、レコード盤を回転させながら、盤の音溝をレコード針でトレースします。12インチのアルバムの多くは、33 1/3 RPMすなわち3分で100回転します。例えば回転数が6%ずれて35 RPMまで上昇すると、半音の音階が変化します。このため、レコードプレーヤーには適切な回転数に調整する手段が備わっています。

また、ワウフラッタと呼ばれる回転数の変動は、音を濁したり、音割れを生じさせたり、ひどい場合は、音程外れやビブラートのような音の原因になります。環境やモーターなどの振動による影響や、回転ムラに影響などが要因です。

さらに、レコードプレーヤー本体は、水平に設置する必要があります。とくに安価なプレーヤーの場合、アンチスケーターと呼ばれる調整機構が無いので、片側のチャンネルにノイズ音や音割れが発生しやすくなります。ヘッドホンでの再生時は、左右の音圧に差を感じることもあります。

ベルトドライブ方式

モーターの回転をベルトでターンテーブル(プラッタ)に伝えるベルトドライブ方式

ターンテーブルの回転方法には、ダイレクトドライブ方式と、ベルトドライブ方式があります。ダイレクトドライブ方式では、回転数の調整が不要だったり、回転数が確認できたりるするので、本ブログは主にベルトドライブ方式を対象にします。

近年、主流となっているベルトドライブ方式では、ターンテーブルの回転部(プラッタ)を上図のようなベルトで回転させます。このためターンテーブル上に重たい機器を載せると、ベルトを傷めてしまいます。

軽量のM5StickCを使用する

ベルトへの負担を減らすために軽量なM5Stickシリーズを使用した。写真の上は M5StickC Plus、下はM5StickC

本ブログでは、M5Stack Technology 社製のフィンガー・サイズのコンピュータ M5StcickC を使って、33 1/3 回転のレコード用RPM計・水平器を製作してみます。

機器本体が軽量なので、ベルトへの負担がすくなく、レコード盤の上にのせて、測定することも出来ます。

軽量なのでレコード盤の上にのせて、測定することもできる

M5StcickC は、回転数を計測するためのジャイロセンサを内蔵しています。このため、本機だけで測定することができます。ただし、測定器ではないので測定結果は目安値です。

ジャイロセンサ MPU-6886(写真はM5Stack Core 2用)

ワイヤレス表示

回転中は液晶画面上の測定値が読みにくくなります。そこで、Wi-Fiで送信し、インターネット・ブラウザに表示できるようにしました。また、測定値をCSVデータとしてダウンロードすることも出来ます。

測定結果を、Wi-Fiで送信し、インターネット・ブラウザで表示することも可能

水平器

まずは、水平器です。M5StcickC 内蔵のジャイロセンサによる測定値から本体の角度を算出し、下図のように赤色の丸印で表示します。下図の中心の小さな点は水平状態のときの位置です。また、画面全体の大きな円は6°の角度が生じたときの位置です。

左側の数値項目[Level]は本体の傾き角度値です。本例の場合、液晶画面のX軸方向(右側)に0.26°、Y軸方向(下側)に0.57°の傾きとなりました。このように右下に傾いた場合、赤色の丸印は、水平器の気泡と同様に中心から左上に表示されます。

水平器表示(中央)と回転数表示(右側)

回転数計(1).角速度センサ

画面右側の2つのバーが回転数計です。回転数33 1/3(rpm)または45(rpm)に対して±20%までを表示します。2つあるうちの左側のバーは角速度(ジャイロセンサ)による回転数計です。

レコードプレーヤーのターンテーブルの上に M5StickC Plus を置き、ターンテーブルを回転させて測定します(下図)。

下図は回転時のようすです。バー内の赤色の線が高いほど回転数が高いことを示し、中央が33 1/3 rpm または45 rpm です。緑色の線は過去の値です。なお、水平器の丸印が上の方に表示されているのは、回転による遠心力の影響です。

ターンテーブルの上に M5StickC Plus を置いて、回転させた時のようす

回転数計(2).加速度センサ

遠心力を逆算して回転数を求めることも可能です。ターンテーブルの中央の突起(スピンドル)から13cm離れた距離にM5Stickを置いた状態で、ターンテーブルを回転させると、画面の最も右にある棒グラフが表示されます。

下図右側にある2つのバーの右側に表示された赤色の線は、加速度から求めた回転数です。筆者が使用したデバイスでは、角速度センサから得た回転数よりも低めに表示されました。センサの個体差によるものと思います。

加速度センサから得られる遠心力から回転数を算出する方法

回転数計(3).照度センサ

より正確な回転数を計測するために、照度センサを使用し、センサが1周する時間を計測する方法も試してみました。こちらは、まだ開発中なので別の機会に紹介します。

より正確な回転数を計測するために照度センサを使用し、センサが1周する時間を計測する方法(開発中)

回転数の折れ線グラフ表示

M5StickC本体の[M5]と書かれたボタンを押すと、折れ線グラフが表示されます。それぞれ、角速度による回転数(赤)と、遠心力による回転数(青)の時間変化です。

回転数の折れ線グラフ表示

角速度(赤)の回転数は 33 1/3 rpm に近い値が安定的に得られました。しかし、遠心力(青)のほうは回転数 30 rpm と約10%の誤差に加え、変動も大きく生じていました。変動の周期は、ターンテーブルの1回転でした。

なお、3台の M5StickC で比較してみましたところ、似たような傾向がありました。角速度(ジャイロセンサ)を利用した測定の方が精度が良いと感じました。

回転数表示

M5StickC本体の[M5]と書かれたボタンを、さらにもう一度、押すと、角速度(ジャイロセンサ)による回転数表示画面に変わります。

回転数表示

数字のみの表示なので回転していても読み取ることができます。

数字のみの表示なので回転していても読むことができる(画像は数字を合成したイメージ図)

QRコード表示

さらにもう一度、M5StickC本体の[M5]と書かれたボタンを押すと、QRコード表示に変わります。同じLAN内のスマホやPCのインターネット・ブラウザから M5StickC に接続するときに確認してください。

ブラウザからアクセスするURLとQRコードを表示した。QRコードはデンソーの登録商標

ブラウザからの操作

インターネット・ブラウザには、水平度(Level)、回転数(RPM)、推定ワウフラッタ値(WOW)が表示されます。推定ワウフラッタは、約47秒間の測定データを使用します。回転が安定した状態のまま、しばらく待ってから、取得してください。

ブラウザ上のボタンは、LCDの表示切替です。最も左のボタンを押すと、測定を一時停止することができます。その他は、M5StickC本体の[M5]ボタンを押したときと同じ動作をします。

CSVデータのダウンロード

ブラウザ上の「CSVデータ取得」に書かれたURLをクリックすると、サンプル数212個のCSVデータをダウンロードできます。項目は、時間(ミリ秒)、水平度(°)、回転数(RPM)、推定ワウフラッタ値(%)です。

サンプル数212個のCSVデータ

回転数をグラフにすると、1周期毎の変化や、約47秒の212サンプル全体の変化が分かりやすくなります。

グラフにすると、回転数の変化のようすが分かりやすくなる

なお、推定ワウフラッタは、この212サンプルの平均二乗誤差から算出しました。

簡易校正機能

水平器の表示画面で、M5StickCの側面(右側)のボタンを押すと簡易校正機能が動作します。校正中は、M5StickCの液晶面が上にくるようにして、動かないように支えてください。

ソフトウェア

開発中のソフトウェアを、下記で公開しています。#define SSIDとPASSに、無線LANアクセスポイントへの接続情報を設定してから、Arduino IDEでコンパイルしてください。

M5StickC Plus用
https://github.com/bokunimowakaru/m5/tree/master/stick_cplus/ex52_rpm

M5StickC用
https://github.com/bokunimowakaru/m5/tree/master/stick_c/ex52_rpm

このリポジトリには、M5Stackを使用し、Wi-Fi機能を活用した様々なサンプル・プログラムが含まれています。

https://git.bokunimo.com/m5/

今後の計画

普段の測定には、角速度センサが使いやすそうですが、センサ個体のばらつきを校正する必要があります。

校正には照度センサを使用するなどにより、1回転する時間を測定し、角度センサの補正値を求めるのが良さそうです。

本製作品だと、レコード盤を載せた状態で測定できるので、レコード盤の重さや種類による違いや、ターンテーブル用のマットの違いなどの影響も測れるかもしれません。例えば、マットなしで測定するとワウフラッタが上昇するなどの確認も可能でしょう。

下記は、2024/6/29に追加した照度センサによる測定方法です。

ご注意

計測機器ではありません

本ページで紹介した製作品は計測機器ではありません。性能表示などに使用することはできません。センサ個体のばらつきなどによる誤差もあります。

保護メガネを着用してください

実験を行うときは、必ず保護メガネまたは通常の眼鏡などを着用してください。ターンテーブル上に置いた機器が飛び出す可能性があります。レコード針に接触する可能性もあります。

ターンテーブルは直せません

ターンテーブルは、中心にあるスピンドルと呼ばれる突起に支えてられています。このため、ターンテーブルに重量物などの負荷がかかると、このスピンドルが傾いて、ワウフラッタの原因になります。スピンドルや軸受けが痛んでしまうと、常にワウフラッタが生じる状態になります。ベルトは交換できますが、スピンドルは簡単には交換できないので、ターンテーブルはレコード針と同様に丁寧に扱ってください。

ターンテーブルの中央にあるスピンドルは簡単には交換できないので、丁寧に扱う

by bokunimo.net

「M5Stack 製 M5StickC で作るレコード 回転数 RPM 計」への2件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

 - 
Chinese (Simplified)
 - 
zh-CN
Chinese (Traditional)
 - 
zh-TW
English
 - 
en
French
 - 
fr
German
 - 
de
Italian
 - 
it
Japanese
 - 
ja
Korean
 - 
ko
Russian
 - 
ru
Spanish
 - 
es