目次
はじめに
近年は、重量盤レコードが増えてきており、またベルトドライブ方式のレコードプレーヤが主流になりつつあります。そこで、重量盤レコードがどの程度、ベルトドライブの回転数に影響するのかを確認してみました。
これまでの内容
本稿を執筆するにあたり、これまで2つの記事を書きました。あとでも良いので、ぜひ下図をクリック(またはタッチ)して、ご覧ください。
測定結果
結論から紹介します。下図のようにターンテーブル上の重量が増えると回転数が減少するようすがみられました。また、測定値のばらつき(標準偏差)も減る傾向があり、回転数が安定することが分かりました。
測定には、前回、紹介した照度センサによる回転数 RPM計を使用し、100回分の測定値の平均値を求めました。但し、0.01 RPM程度のサンプリングによる誤差が生じる可能性があります。また、測定器ではないので測定結果は目安値です。
重みが増すと回転数が下がる
ターンテーブルにマットを敷かずに測定してみたところ、10回分の測定値(誤差0.03RPM)で33.71RPMが得られました。
下図は、マットを敷いて測定した時のようすです。回転数は33.73RPMに増加しましたが、測定誤差です。
重量盤のLPレコード盤を載せたときの回転数は33.48RPMと、測定誤差を上回る変化がありました。ただし、変化が大きすぎます。その理由は後述します。
これらは10回の測定の平均値(サンプリング誤差0.03RPM)です。前述のグラフは100回の平均値(サンプリング誤差0.01RPM)で測定しており、より正確に評価しています。
なぜ回転数が下がるのか
ベルトドライブ式のレコードプレーヤには下図のような直流モータが搭載されています。また、一般的な直流モータは、電流と回転負荷によって速度が変化します。仮に電流が一定であったとしても、負荷が高まると回転速度が低下するのです。
なぜ回転数が安定するのか
回転中の重量盤レコードの回転数を変化させるには、通常のレコードよりも多くのエネルギーが必要になります。仮にモーターやベルト、キャプスタンなどによる回転ムラ要因のエネルギーが生じたとしても、重量によるエネルギーに吸収されて、回転ムラが生じにくくなります。とくに、レコード盤の外周の質量には遠心力が生じるため、回転を安定化させる効果が高くなります。
必要なハードウェア
前回と同様、M5StickC PlusにM5Stack製 DLight HATを接続して製作しました。
ソフトウェアの使用方法
Arduino IDEを使って、M5StickC Plusに下記のソフトウェアを書き込み、M5ボタンを4回押し、サイドボタンを押し続けてください。[Calb]が表示されてから0.5秒以内にボタンを離すと、100回測定を開始します。0.5秒を超えると10回測定になります。100回測定には約400秒(約7分)を要します。製作方法や実験時の注意点は、前回の記事を参照ください。
作成したプログラム:
https://github.com/bokunimowakaru/m5/tree/master/stick_cplus/ex52_rpm_lum
補足・周期的な測定誤差
通常、測定回数が10回と100回では平均することによる平準化効果によって、約3倍(√10)の精度の向上が見込めます。しかも本例の場合は、下図のように約20回の周期的な誤差が生じていました。このため、その周期を包含した多くのサンプルを使用することで、より大きな平準化効果が得られました。
ご注意
測定結果は全て目安値であり、誤差が含まれます。また、M5StickC Plusの重量は、十分に軽量ですが、若干、影響すると考えられます。
本稿は、測定対象のレコードプレーヤやレコード盤の性能を示すものではありません。また、本記事をもとに、製品の良し悪しを推測できないように配慮しています(レコード盤の重みと言う性質の比較のみを紹介し、他製品との比較は避けました)。
製作方法や実験時の注意点は、前回の記事を参照ください。
by bokunimo.net
「レコード盤の重量によって 回転速度 RPM値 がどれだけ低下するのか」への1件の返信
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