目次
暑さ指数WBGTとは
WBGTは湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature)の略で、国際規格化されている暑さ指数の一つです。WBGTの単位は℃なので、直感的に分かりやすい指標です。しかし、その測定には湿球黒球温度計という専用の計測器が必要でした。本稿では、温度と湿度から推定する簡易的かつ模擬的な測定方法を紹介します。
日常生活における熱中症予防指針
日本生気象学会が作成した「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3※1」には、温度と湿度から暑さ指数WBGTをもとめる換算表と、WBGT値における危険度がまとめられています。以下は、WBGT換算表をエクセルへ転記したものです。
※1 本稿執筆時点ではVer.3→4に更新されている(https://seikishou.jp/cms/wp-content/uploads/20220523-v4.pdf)
本稿で使用する換算式
ここでは本ブログで紹介した下記の換算式を使用します。
WBGT = 0.725*Ta + 0.0368*RH + 0.00364*Ta*RH – 3.246
MIT LICENSE
換算式の詳細は下記を参照ください。
製作方法
ハードウェアの構成
ラズベリーパイに SENSIRION 製 温湿度センサ SHT30 を搭載した M5Stack 製 ENV II Unit または ENV III Unit を接続して製作します。
必要な機材
以下の機材と、インターネット接続環境が必要です。
- ラズベリーパイ本体と使用するための周辺機器
- M5Stack 製 ENV II Unit または ENV III Unit
- GPIO 接続用 Grove 端子メス-QI端子メス端子ケーブル
接続方法
ラズベリーパイの電源を切った状態で、下図のように接続します。ENV II Unit または ENV III Unitの電源は5V仕様ですが、 3.3V に接続してください。3.3Vに接続しても、センサ SHT30 の電源仕様を満足します。
Raspberry Pi Zero でも
もちろん、他のラズベリーパイでも動作します。Raspberry Pi Zero だと、コンパクトです。
I2Cインタフェースの有効化
ラズベリーパイを起動後、[Raspberry Piの設定]にて、[インターフェイス]-[I2C]を有効に設定すれば、ハードウェアの準備は完了です。
Python 用ソフトウェアのダウンロードとインストール
ラズベリーパイ上で LXTerminal を起動し、下記のコマンドを入力して、 Python用 ソフトウェアをインストールしてください。
$ git clone https://bokunimo.net/git/wbgt/ ⏎
Python ソフトウェアの実行方法
下記のコマンドを入力すると実行できます。
$ cd wbgt/raspi ⏎
$ ./wbgt.py ⏎
Thonny Python IDE で実行することもできます。メニューの[View(表示)]から[Plotter]を選択すると、右下にグラフが表示されます。
湿度が上がると WBGT 値も上がる
下図は Thonny IDE で確認しながら、湿度を変化させたときの測定例です。青色が温度で緑色が WBGT 値です。湿度の変化に追従して、温度値を上回ったり下回ったりしていることが分かります。
検証について ※注意事項
実際に使用される場合は、十分に検証を行ってください。
当方はこれらの使用に関して一切の責任を負いません。
参考までに、本換算式は複数の企業様でご採用いただいており、各社での検証の結果、問題ないと聞いております。なお、採用済の製品についても、当方は一切の責任を負わないことを承諾いただいています。
本換算式は屋内用です。屋外では日射による温度指数の上昇や風による減少が生じると考えられます。このため、屋外で使用する際は、より慎重な検証が必要です。
(参考) WGBT と WBGT
紛らわしいですが、一般的には「WBGT」です。
ボクも本ブログを公開する直前までWGBTと表示しており、一部の画像やGitHubの履歴に「WGBT」の文字が残っています。
- WGBT = Wet Globe Bulb Temperature
- WBGT = Wet Bulb Globe Temperature
同じような事例は多く、広島県府中市や島根県江津市の公式ウェブサイト、計測器メーカのエー・アンド・デイでは「WGBT」を用いています。
WGBTと言えば、GBTつながりでChatGBT(GPT)でも確認してみました。生成AIらしい回答が得られました。
(参考) 関連資料・参考文献
下記に関連資料の公開と参考にした資料をまとめました。
換算式の詳細(当方ブログ):
https://bokunimo.net/blog/ichigo-jam/29/
ソフトウェアの情報(英文・GitHub Pages):
https://git.bokunimo.com/wbgt/
SHT31を使った不快指数(福野泰介の一日一創):
http://fukuno.jig.jp/2209
「日常生活における熱中症予防指針」Ver.3 確定版
http://seikishou.jp/pdf/news/shishin.pdf (リンク切れ)
日本生気象学会雑誌 50(4):147-157, 2014
通常観測気象要素を用いたWBGTの推定
国立環境研究所・環境健康研究センター 小野 雅司, 気象業務支援センター 登内 道彦
https://www.jstage.jst.go.jp/…/seikisho/50/4/50_147/_pdf (リンク切れ)
(参考) 今後の予定
本稿の執筆時点で、以下を検討中です。
- M5Stack、ESP32、Raspberry Pi Pico 対応
- Si7021 と HTU21D での動作確認(動作しない場合は対応予定)
- 更新された日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.4」対応(要否も含めて)
- 照度計を考慮したWBGT算出式の検討(文献調査も含めて)
- 風速の推測(方法も含めて)と、風速を考慮したWBGT算出式の検討
by bokunimo.net
その2に続きます。
「Raspberry Pi で 暑さ指数 WBGT その1:温湿度センサ」への3件の返信
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[…] 前回のその1:温湿度センサでは、WBGT の概要と、疑似 WBGT をラズベリーパイで測定する方法について紹介しました。ソフトウェアは、「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3 確定版」の簡易 WBGT 換算表を改良したものでした。 […]
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