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僅か1.24mm超小型なのに高音質。D級アンプPAM8012を使ったオーディオ・アンプの製作

オーディオ・アンプにはヒートシンクが必要と思っていましたが、デジタル技術で解決されていました。効率90%のD級アンプで、大迫力・高音質が楽しめます。

PAM8012使用2ワットD級アンプモジュール

DIODES(PAM)製D級アンプを実装した秋月電子通商製のアンプ・モジュールです。実は、チップがあまりも小さかったのと、MUTE端子を引き出すことが出来なかったので、あまり期待していませんでした。

PAM8012使用2ワットD級アンプモジュール
(https://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-08217)秋月電子通商 K-08217

実際に製作して使ってみると、どちらも心配する必要がありませんでした。

製作方法

モジュールだけでもアンプとして使うことが出来ますが、本ブログでは、以下のように入力側に電圧利得設定用の抵抗を追加し、出力側にEMIおよびLCフィルタを追加しました。

入力側にゲイン調整用の抵抗を追加し、出力側にEMIおよびLCフィルタを追加した

入力側の抵抗は、他のアンプと比較しやすいように最大利得を8倍から6倍にしました。データシートの入力インピーダンスと最大利得から、入力抵抗31kΩ、負帰還抵抗246kΩであることが推測できるので、外部に取り付ける入力抵抗を10kΩとしました。

出力側のEMIフィルタとLCフィルタは、デジタルノイズを低減する効果があります。EMIフィルタはOUT+、OUT-のそれぞれの端子に挿入します。LCフィルタのカットオフ周波数は34kHzにしました。

製作例を下図に示します。最も大きな黄色の部品がLCフィルタ用のコンデンサ、黒い円筒状の部品がインダクタです。水色の部品はEMIフィルタです。

最も大きな黄色の部品がLCフィルタ用のコンデンサ、黒い円筒状の部品がインダクタ

アンプ・モジュール上に実装されている入力用のコンデンサ0.1uFによるカットオフ周波数は40Hzです。大型スピーカに対応するために、0.47uFのコンデンサを並列に追加しました。

大型スピーカに対応するために、アンプ・モジュール上に実装されている入力用のコンデンサと並列に0.47uFのコンデンサを並列に追加した

入力側のコンデンサと出力側のLCフィルタ用のコンデンサは、どちらも0.47uFですが、部品の大きさに大差があります。入力側は、モジュール基板上に大きな部品を実装できなかったため、積層セラミック・コンデンサを使用しました。出力側のLCフィルタ側はスピーカ内の回路などで使われるメタライズド・ポリエステル・フィルム・コンデンサを使用しました。電流の少ない入力側に積層セラミック・コンデンサを使うことで、出力側からのデジタル・ノイズの回り込みなどの影響を抑え、ノイズや歪みを低減する効果が出る場合があります。

基板の裏側です。電源線1本はビニール電線を使用しました。注意点は、オーディオ入力~アンプ入力までのGND配線と、アンプ出力のEMIフィルタ~アンプのGNDまでの配線です。それぞれの電流が同じ配線を通らないように配線しました。

自動利得調整 anti-saturation機能

アンプが歪まないように0.4dB単位で電圧利得を自動調整する機能です。起動時は最大の18dB(8倍)に設定されており、入力信号に応じて下げたり上げたりします。

ポップ・ノイズ低減機能(Startup Protection)

通常のアンプICの場合、電源投入時と電源OFF時にスピーカから「ブツッ」という音が出力されます。このため、アンプICのMUTE機能や、出力部にMUTE回路を追加し、電源操作時にMUTE状態にして対策します(例えば、スイッチ付き可変抵抗器でMUTE信号を制御するなど)。本アンプICは、MUTE機能を制御しなくても、ポップ・ノイズが低減されていました。音量を絞った状態だと、全く聞こえないレベルでした。

測定結果例

下図の左側に前回製作したTPA2006の測定結果を、右側に今回製作したPAM8012の測定結果の一例を示します。TPA2006では3次高調波歪みが生じていましたが、PAM8012では観測できないレベルに抑えられていました。なお、測定は簡易的な測定方法のため、得られた結果は目安値です。

TPA2006では3次高調波歪みが生じていたが、PAM8012では観測できないレベルに抑えられていた

下図は測定時の様子です。製作したアンプの出力に負荷抵抗(8Ω)を接続し、抵抗の両端の波形をスマホで観測しました。

製作したアンプの出力に負荷抵抗(8Ω)を接続し、抵抗の両端の波形をスマホで観測した

ケースに入れる

実際に使用するには、ケースなどに収容します。下図は、ポリカーボネート製のケースの穴加工例です。ポリカーボネートは燃えにくい素材なので安心ですが、他のプラスチックに比べ、少し高価です。

ポリカーボネート製のケースに穴加工を行った製作例。ポリカーボネートは燃えにくい素材なので安心だが、他のプラスチックに比べ少し高価

電源入力部にはポリスイッチ0.4A(遮断0.8A)と、1000uFのコンデンサ、LEDを追加しました。また、オーディオ入力には可変抵抗(50kΩ・Aカーブ)を追加しました。

電源入力部にポリスイッチ0.4A(遮断0.8A)と、1000uFのコンデンサ、LEDを追加し、オーディオ入力部には可変抵抗(50kΩ・Aカーブ)を追加した

その他

前回、製作したTPA2006を使ったアンプ(下図・左)と似たようなデザインで製作してみました。今回製作したPAM8012を使ったアンプ(下図・右)は、電源投入時やOFF時のポップ・ノイズが抑えられているので、通常の(スイッチ付きではない)可変抵抗器を使用しました。

前回、製作したTPA2006を使ったアンプと似たようなデザインで製作した。今回製作したPAM8012を使ったアンプは、ポップ・ノイズが抑えられているので、通常の可変抵抗器を使用した

同じデザインなので、コンポのように重ねることも出来ます。同じケースを使った、DAコンバータや、インターネット・ラジオ受信機など、様々な機器を重ねてゆくと楽しいでしょう。

同じデザインなので、コンポのように重ねることも出来る

前回の製作例

ご注意

  • 本ブログ内の情報によって、被害を被られたとしても、一切、補償いたしません。自己責任でご利用ください。
  • 本稿に記した測定結果は、簡易測定によるものです。またサンプル数も1台です。
  • 測定結果は、デバイスの性能を示すものではありません。

by bokunimo.net

「僅か1.24mm超小型なのに高音質。D級アンプPAM8012を使ったオーディオ・アンプの製作」への3件の返信

私には難しすぎるなと思っていた アンプが
小さく ブラックボックス化してあり デジタルの部品のように扱えるのは とても嬉しいですね
教えていただきありがとうございました

コメントありがとうございます。コメントいただいたとおり、チップ化やモジュール化で手軽に作れるようになりました。
本品は、まだ入力と出力がアナログです。また、小型になって入出力間でノイズが回り込みやすくなりました。
デジタル入力になると、そういった問題も無くなると思います。

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